本研究は,サービスコンピューティングにおけるサービス連携を行う際に,特定のサービス提供者がフリーライダーとして不当に利益を得ることを防ぐ機構の実現を目指すものである.本年度は,サービス連携において戦略的操作不可能(strategy-proof)な利益配分メカニズムと,その実現アルゴリズムを提案した.戦略的操作不可能なメカニズムとして,VCGメカニズムが知られており,その理論的性質は広く研究されているが,実現にあたってはその計算量が課題となる.そこで本研究では,動的計画法を拡張したアルゴリズムによって,戦略的操作不可能性を保ちながら,効率的に利益配分を計算する手法を提案した.実験的評価によって,提案手法が単純な動的計画法の適用と比較して大幅に高速であること,また実用上十分な規模のサービス連携に対して適用可能であることを示した.この成果は,サービスコンピューティング分野における主要な国際会議の一つであるServices Computing Conference (SCC 2013) に採録が決定している. さらに,価格決定及び利益配分方式の理論的性質と実性能を一般的に確認するため,サービス利用者がサービス要求を提示し、複数のサービス提供者が価格と共に自らのサービスを提示するシミュレーションフレームワークを開発した.このシミュレーションフレームワーク上では,ユーザが任意のサービス利用者・サービス提供者の戦略,及び利益配分の制度(メカニズム)を設定できる.これにより、サービス利用者・サービス提供者の戦略や,利益配分の制度が、価格決定にどのような影響を与えるかを分析することを可能とする.前述の利益配分アルゴリズムの評価は,このフレームワークを用いて行われたものである.
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