研究課題
真性粘菌 Physarum polycephalum の変形体は,単細胞多核の巨大アメーバである.本研究課題は変形体が有するであろうと予測される計算,記憶,学習能力についてその存在を明らかにすると同時にそのメカニズムを明らかにすることを目的とするものであるが,一連の実験とシミュレーションにより以下のような成果が得られた.1.昨年度の実施した実験により,変形体に連合学習を行わせることに成功した.具体的には,変形体は20℃から30℃程度の温度範囲においては高温に向かう走性を持つが,低温条件(20℃)にのみ豊富な栄養源を準備することにより,変形体に低温の場にのみ栄養源が存在するという条件での連合学習を行わせ,走温性を逆転させることに成功した.これを受け,今年度はこのような連合学習を可能にする遺伝子制御ネットワークのシミュレーションを行い,少なくとも原理的には適切なネットワークを構成することによって細胞による連合学習が可能となることが示された.2.昨年度実施した実験により,変形体における新規な走性が発見された.即ち,変形体は走磁性を持ち,磁場の方向に沿って運動することが明らかとなった.また,変形体は磁場に沿って運動するが,その運動方向,つまり N 極と S 極のどちらに向かうかは,細胞個体の重量と磁場強度に依存することが観察された.これを受け,今年度はこのような走磁性が変形体の探索行動にどのような影響を与えるかについてのシミュレーションを実施した.その結果,地磁気の存在下において磁場に基づく空間の情報を与えられた変形体の集団は,空間の探索効率を増すことが明らかとなった.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
Proceeding of the 6th International Conference on Soft Computing and Intelligent Systems, and the 13th International Symposium on Advanced Intelligent Systems
ページ: pp.296-300
Proceeding of the 16th Asia Pacific Symposium on Intelligent and Evolutionary Systems
巻: 16 ページ: 187-192
巻: 16 ページ: 111-116
巻: 16 ページ: 58-63
http://www.nda.ac.jp/~sirakawa/index.html