人物行動解析はセキュリティだけでなく空間利用調査に基づくマーケティングなど多様な応用展開を持つ技術として期待されている.本研究では, 人物行動をコンピュータ上で解析するために,複数人物の行動を模擬する確率的シミュレーションモデルを導入し,そのモデルに含まれるパラメータを実際の画像計測から推定するデータ同化法を提案している.主な研究成果は次の通りである. 1)確率的セルオートマトンに基づく複数人物行動シミュレーションモデルを実装した.このモデルには,環境や他者との相互作用を表現するパラメータが含まれている.これらのパラメータを画像計測で得た人物位置を用いて粒子フィルタによるデータ同化アルゴリズムを開発した.人工データによる数値実験で,人物移動の一期先予測性能を評価し,粒子フィルタに用いる粒子数の増加に伴い推定性能が向上すること,他者との動的な相互作用を組み込むことで大幅に推定性能が向上すること,人物数がある一定以上にならないと推定誤差が大きく,一方で人物数を増加させても推定性能はある一定以上では向上しないことが示された.実際の動画像に関しても同様な結果を得ている. 2)データ同化アルゴリズムに加えて,その入力として必要な画像計測について次のような開発を実施した.ここでは,人物行動を俯瞰的に捉えるカメラ映像だけでなく,ウェアラブルカメラを用いて一人称視点映像も対象にしている.まず,屋内環境(大学図書館)に限定して,個人の行動を一人称視点映像から認識するアルゴリズムを開発し,3つの行動に関して67%の認識率を達成している.次に,人物行動の可視化を目的に,画像系列からの3D地図作成および自己位置推定アルゴリズムを実装した.
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