研究課題/領域番号 |
23700190
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
根本 充貴 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (10451808)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 多様体学習 / 医用画像理解 / テクスチャ解析 / すりガラス状結節 |
研究概要 |
本研究の目的は,雑音が多量に含まれる事の多い医用画像から病変を自動検出するための手法,とりわけ雑音に頑健な多様体学習を用いた手法の開発である. 高次元特徴量空間における病変データの分布は,病変パターンの幅広い多様性から複雑な形状をしている.さらに医用画像は雑音を大量に含む事が多く,雑音に影響されず複雑な病変データの分布を解析する事は困難である.本研究では,この様な分布解析問題の解決手法として多様体学習に注目し,それを用いた病変検出手法を開発する. 23年度は,既存の多様体学習を用いた医用画像のテクスチャ解析,およびその結果による病変の自動検出に関する基礎検討を行い,国内の学会においてその成果を報告した.具体的には,画像テクスチャの解析が不可欠である胸部CT像中のすりガラス状(GGO:Ground Glass Opacity)結節の自動検出問題を例題として定め,代表的な多様体学習の1つであるLaplacian Eigenmapを用いて,画素単位で計測された多数のテクスチャ特徴量の次元削減処理に適用した.この際のLaplacian Eigenmapは,教師無し学習法を用いた.得られた部分空間特徴量を用いて,複数種の識別器によるGGO画素の識別処理を行った際の識別性能を確認した.その結果から,教師無しの学習法であっても,ある程度のGGO画素の識別効果を持つ部分空間を得ることができることを確認できた一方で,識別性能へのより高い効果を得るためには,教師あり/半教師ありの多様体学習法が不可欠であるという見通しを得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,本研究において最初に取り扱う例題を「胸部CT像中のすりガラス状(GGO:Ground Glass Opacity)結節病変の識別」に変更し,それに基づく初期研究の成果を国内学会で報告済みであることを述べる. 申請時に提示していた研究例題(頭部MRI像上の脳動脈瘤検出,胸部CT像上の肺結節検出,全身PET/CT像上の皮膚病変検出)から,上記例題に変更した理由としては,GGO結節の識別問題の方が画像テクスチャ解析との関連性が高く,手法等の変更による効果が敏感に出やすいと考えたためである.例題変更に伴い,GGO症例画像の収集やGGO病変識別ソフトウェアの開発に時間を要したが,上述の通り.開発したソフトウェアおよび収集したGGO症例画像を用いた研究成果を23年度中に国内学会で報告済みである. 加えて,報告済みの研究成果(実際の医用画像への多様体学習を用いたテクスチャ解析処理の適用)は,24年度の研究計画に含まれるものであることからも,研究は順調な進展を示していると言える. 雑音の多く含まれることの多い医用画像解析に特化した手法の考案という点では計画よりは遅れているものの,上記研究成果を基に挽回が容易であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
23年度中に国内学会で報告した内容を基に,雑音に対応し医用画像解析に特化した多様体学習の選択および考案を行う.また,それらの多様体学習手法を胸部CT像中のすりガラス状(GGO:Ground Glass Opacity)結節病変の識別問題に適用し,その結果についての検討,および新たな学習手法考案へのフィードバックを行う. 加えて,GGO以外の病変(頭部MRI像上の脳動脈瘤検出,胸部CT像上の肺結節検出,全身PET/CT像上の皮膚病変検出など)へも手法を適用し,病変識別性能について検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度の研究費に繰越金が発生した主な理由としては,新規GGO症例データの収集やGGO識別アプリケーションの開発に時間を割いたことで,学会発表の機会が当初の予定より少なかったことが挙げられる.24年度は,前年度不足していた国内外学会におけるを研究報告の機会を多くする予定であり,それらの渡航費用として23年度の繰越金および24年度の研究費を利用する予定である.また,学会誌に論文を投稿する際の英文校閲費用にも充てる予定である.また,実験の高速化を測るため,高性能PCおよびGPUの購入を予定している.
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