研究課題/領域番号 |
23700192
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宋 軒 東京大学, 空間情報科学研究センター, 特任助教 (20600737)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | Intelligent Surveillance / Abnormality Detection / Sensor Fusion / Online Learning |
研究概要 |
2011年度における成果として、理論およびアルゴリズムの開発、共同実験およびデータセット構築の2点にまとめて報告する。(1) 理論およびアルゴリズムの開発2011年度において、リアルタイムかつ全自動での異常検知を行なうために、極めて新規性の高いリアルタイム移動軌跡学習手法を開発した。この手法により、パーティクルフィルタ法を基とした追跡技術を用いて大多数の人々の移動軌跡の取得に成功した。また、一定時間ごとに、行動パターンを用いて移動軌跡をリアルタイム分類することにも成功した。得られる結果は以下の2つとなる。一つ目は、行動パターンによる分類で異常とみなされる移動軌跡、二つ目は、分類された移動軌跡のうち、各カテゴリでの生起確率が低いと見なされる移動軌跡である。さらに、非常に混雑した場所で高精度に異常検知を行なうために、出入口情報や通路情報などの環境側情報、局所的な人の流れ、人々の相互作用など移動に影響する要素を細かく加味した新規性の高いモデルを構築した。そして、実際にJRの駅に監視システムを設置し、適用実験を行い、有効に動作させることに成功した。(2) 共同実験およびデータセット構築開発した手法の更なる検証を行なうために、実環境での実験を行なった。実験は2回行い、一つは日立製作所株式会社との共同研究、もう一つはJR東日本株式会社との共同研究で、共に混雑状況での歩行者情報の取得を行なった。前者の実験では、数台の水平レーザスキャナセンサを用い、テストおよび評価を行なった。後者の実験では、水平レーザスキャナセンサ、カメラ、Kinectセンサを用いた。両実験で、非常に有用なデータを取得でき、更なる研究の発展のためにデータベース構築を行なうことができた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画の70%以上を達成しており、研究の進捗状況は良好であると言える。さらに今年度、既存の手法を統合し、統合監視システムを開発した。まず、水平レーザスキャナセンサやカメラなどの異なるセンサからの情報を統合するために、リアルタイム機械学習技術を提案した。さらに、混雑した屋外でも高精度に検知、移動軌跡観測、行動パターン分類を行うシステムを開発した。次に、既存の機能を統合し、リアルタイムかつ無人環境において、移動軌跡観測、環境側設備等の位置取得、異常検知を同時に行う極めて新規性の高いシステムを開発した。これら3つの機能が相互補完し合い、精度を高めることに成功した。このシステムは、以下の3点において、既存の研究と比較して優れていると考えられる。まず、一点目として、60m×35m以上の広範囲における観測が可能であり、移動軌跡観測、環境側設備等の位置取得、異常検知を同時に、かつ、リアルタイムかつ無人環境において行なうことができることが挙げられる。二点目は、機械学習を行うことで,逐次精度を向上させることができる点である。この効果により、リアルタイムでの検知の精度がより高まると考えられる。最後の三点目として、全てを無人環境下で行えることがあげられる。このことにより、手動での行動パターン分類やデータベース整備などを行わずにすむ。そして、このシステムをJRの駅で実際に適用実験を行い、60m×35mの範囲をカバーし、同時に180人以上の移動軌跡の取得、リアルタイムに環境側情報を更新と異常検知を無人環境下で行うことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 移動軌跡取得に失敗した際の原因として、観測誤差が挙げられる。観測誤差が大きい状況の場合は、移動シミュレーションモデルを適用することで、その誤差を補うことができると考えられる。そこで、人々の相互作用なども考慮した、より高精度な移動シミュレーションモデルを構築することを目指す。(2) 行動パターンの分類カテゴリが多くなるにつれ、計算量が大きくなってしまう。そこで、計算量を減らし、最適化を行うことも重要な課題の一つに挙げられる。(3) レーザスキャナセンサによる計測結果に対して、不振な動きをシンプルで明快に定義することがまだ完遂していない。そこで、科学的に計測結果を評価する手法の開発も重要な課題の一つである。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度、以下の事柄に対し予算を組んでいる。(1) 機器購入:計算量増加に対応するため、いくつかのサーバを購入予定である。また、監視範囲の拡大のために、計測センサも購入予定である。(2) 論文投稿、学会参加費用:前年度、いくつかの論文を重要な論文誌や学会に投稿した。その投稿費用および学会参加費用が必要となる。(3) 実験費用:次年度、開発したシステムのより詳細なテストと検証が必要となる。そのため、新たな実験を行うために費用がかかる。
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