○最終年度に実施した研究成果 本年度は,大きく(1)指先接触面計測システムの改善,(2)接触面計測によるリアルタイム接触力推定技術の開発,(3)触覚知覚感度向上デバイスの製作を行った.(1)について,従来のシステムは大型のカメラ装置を使用していたため,インタフェースに利用するにはスペースを取り過ぎる問題があった.そこで小型カメラを購入し,小型化をはかった.(2)について,ヘルツの接触理論と偏心度の定義を見直すと,接触面測定から得られる滑り指標である偏心度から,指先から接触面に与えられた垂直方向力,水平方向力が推定可能であることが示唆された.そこで力センサを利用せず,接触面の画像情報のみから垂直・水平の2軸の力を推定する手法を開発した.実験の結果,垂直方向については約15%,水平方向については約10%の精度で力を推定できることがわかった.(3)については,ウェアラブルな微弱振動付与デバイスを構築し,確率共鳴現象を利用した指先触覚知覚向上の評価を行った. ○研究機関全体を通じて実施した研究成果 本研究課題では,人の滑り知覚規範の力制御戦略を工学的に応用可能な形で定式化し,人を機能的に模す,または人と相互作用する実システムに応用することを目的とした.期間全体の成果として,人の滑り知覚規範をヘルツ接触理論に基づき偏心度の概念からモデル化する技術を開発し,これを利用して重量や摩擦感を錯覚させるデバイスの開発に成功した.また確率共鳴現象を利用して人の触知覚機能を改善することに取り組んだ.確率共鳴現象とは微弱な信号に最適なノイズを重ね合わせることで,本来知覚できない微弱な信号を感知できるようになる現象である.微弱振動を付与することで知覚向上を生起できるウェアラブルデバイスを開発し,受動的刺激に対して指先知覚感度が向上することを確認した.
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