研究課題/領域番号 |
23700213
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
星 貴之 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80537704)
|
キーワード | 静脈 / タッチインタフェース / 触覚 / 近赤外光 / 指 |
研究概要 |
本研究は、指の皮膚内部の静脈を「生体内にあらかじめ配置されたマーカー」とみなし、それを活かして皮膚内部の変形を非侵襲的な観察や、タッチインタフェースとしての応用を目指すものである。 これまでの撮像系は、指に装着した赤外線LEDで爪側から照明し、CMOSイメージセンサで腹側から撮影するものであった。CMOSイメージセンサには、市販のWEBカメラから可視光透過フィルタを除去し、赤外線透過フィルタをかぶせたものを用いていた。また指腹への刺激は透明アクリル板によって与えていた。皮膚表面に与えた変位と皮膚内部(静脈像)に生じる変位の定量的な関係など、基礎的なデータはこの撮像系によって取得することができた。しかし、詳細なデータを取得するためには性能不足であった。そこで平成24年度は、(1)静脈像をより詳細に観察できる撮像系の構築と、(2)撮像を妨げることなく指表面へ触覚刺激を与えることのできる装置の開発を行った。 (1)撮像系は、現段階では赤外線LEDを装着する必要はないという判断のもと、LEDアレイの上に指を置く構成とした。また、拡大レンズを搭載したCMOSイメージセンサを採用し、静脈の変位を詳細に観察できるようにした。 (2)撮像を妨げない触覚刺激としては、集束超音波による非接触作用力を用いることとした。これは研究代表者が以前から開発を進めていた独自の技術である。指先という狭い範囲を刺激する目的であるため、従来の位置解像度5mmを0.5mmに高機能化した。超音波は直径1cm程度の範囲に集中し、皮膚を局所的に押すことができる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は「(1)鮮明な静脈像が得られるよう撮像系の最適化を図りつつ、(2)変更を加えることで新たな情報を得る」ことを目標として掲げていた。変更としてはステレオ撮像、顕微鏡、高速カメラ、複数波長などを例として挙げた。(1)については取り組んだものの、(2)については集束超音波のみの取り組みであったため「区分 (3)やや遅れている」と自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に実施を予定していた、「変更を加えることで新たな情報を得る」について取り組む。例えば、(1)カメラをステレオにする。これにより静脈の三次元的構造を取得し、皮膚表面に対してせん断方向だけでなく垂直方向の情報も得る。(2)顕微鏡と組み合わせて微細な振動を計測することも考えられる。また(3)近赤外にも感度を持つ高速カメラを用いて指内部に生じる振動分布を直接観察できれば、皮膚表面の振動分布と比較することにより皮膚組織による減衰、位相遅れ、弾性波の反射・干渉などの情報が得られる。(4)パルスオキシメータ(異なる2つの波長を指に照射し、その透過度から酸素飽和度を求める医療機器)と同様に、異なる複数の波長を用いることで計測上の利点があるかどうかも探る。これらに加え、(5)新たに導入した集束超音波による局所刺激を用いた静脈変位の挙動の観察も行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|