研究実績の概要 |
本研究は、指の皮膚内部の静脈を「生体内にあらかじめ配置されたマーカー」とみなし、それを活かして皮膚内部の変形を非侵襲的な観察や、タッチインタフェースとしての応用を目指すものである。 平成23年度は、静脈を観察するための撮像系の構築と、皮膚表面に与えた変位と皮膚内部(静脈像)に生じる変位の関係を定量的に調べる実験を行った。0.3Nまでの押し付け力であれば静脈像が観察できることが分かった。また、せん断および回転変位を皮膚表面に与えた際、静脈像の指定した領域と指輪郭の相対変位および相対角度変化が、指輪郭の変位・角度変化と高い相関があることが確認された。 平成24年度は、静脈の変位の詳細な観察に向けて、拡大レンズを搭載したCMOSイメージセンサを採用して撮像系を構築した。また研究代表者が以前から開発を進めていた集束超音波を応用して、撮像を妨げることなく皮膚表面に触覚刺激を与えることのできる装置を開発した。 平成25年度は、指表面に加えられた力の大きさと向き(4自由度X, Y, Z, θ)を推定するソフトウェアを開発した。基礎実験においてはコンピュータ画面を見ながら人手で静脈像と指先輪郭との相対距離や相対姿勢を調べて定量データとしていたが、これを自動化した。またロバスト性を高めるため、空間方向だけでなく時間方向の情報の利用も試みた。 平成26年度は、これまでの成果を整理・統合し、リアルタイムで動作するユーザインタフェースを開発した。砲弾型LEDではウェアラブルデバイスの重心が高い位置にあるため指に装着したときがたつきが生じていた。表面実装型LEDを採用してデバイスを薄型化することによってこの問題を解決し、ユーザへの負担を軽減した。
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