研究課題/領域番号 |
23700214
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
石橋 良太 首都大学東京, システムデザイン学部, 助教 (20535835)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 (アメリカ合衆国) / ロボティクス・ハプティクス / システム制御 / 生体 / 触覚受容器 / 繰り返し学習制御 / パラメータ推定 / スポーツ科学 |
研究概要 |
本研究の目的は,ヒトの能動的触覚センシングについて,その原理を明らかにすることである.特に,機械受容器とその周辺構造からなるセンサ系の力学特性が動的条件下においていかに機能するのかを明らかにする.はじめに,皮膚構造と触覚受容器からなるセンサ系の動特性を考慮した指先の制御原理を解析する.次に対象を筋空間でのセンサ系へと展開し,上腕や下肢の運動をタスクとした運動制御特性の解析と実験的検証を進める.23年度は指先皮下の機械受容器とその周辺構造のモデルを導出し力学特性を考察した.一般に,皮下構造等の柔軟体のモデリングでは,モデルの複雑化とそのパラメータ推定が課題となる場合がある.他方,提案モデルでは,皮下構造の詳細に着目することで,外力による皮膚変形が簡便なメカニズムにより触覚受容器へ伝達される可能性を示し,これを簡便な力学モデルで表した.次に,研究対象を筋空間でのセンサ系へと展開し,人体の骨格筋構造のモデル化とパラメータ推定に取り組んだ.骨格筋構造に関する制御原理は,拮抗筋の内力を利用した筋張力の制御法として人工筋(SMAアクチュエータ)を利用した腱駆動ロボットを用い,位置制御,インピーダンス制御等に関してむだ時間を有する強い非線形系における制御原理の機能的検証がなされた.これと並行し,繰り返し学習制御とパラレルワイヤ駆動装置を利用した人体のパラメータ推定法を展開した.本手法は,逆ダイナミクスを用いずに関節空間の特性を動的推定できる.さらに,上腕や下肢運動における知覚と運動特性の解析を進めた.特に,片足立ち姿勢制御を例に基礎実験を進めた.従来までの成果では,足裏の機械受容器に無意識下で機械ノイズを印加すると,SRの効果により姿勢制御機能が向上することが確認されている.このことは前述の皮膚構造モデルからも考察できる.本年度は筋紡錘へと拡張し,無意識下で筋が受ける外乱の作用を調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1.皮膚と受容器の力学モデル) 一般に皮下構造等の柔軟体のモデリングではモデルの複雑化とそのパラメータ推定が問題となる場合がある.これに対し本研究では機械受容器の周辺構造(真皮乳頭とコラゲン繊維)に着目することで外力による皮膚変形が簡便なメカニズムにより触覚受容器へ伝達され,これを簡便な力学モデルで記述できる可能性を示した.本知見を展開すればヒトに近い特性の人工皮膚が簡便に作成可能であると想定される.(2.身体力学特性と制御) 筋空間での知覚と運動に関し人工筋を利用した腱駆動系により検証を進めた.検証では目標位置で釣り合う内力をフィードフォワード入力として与える制御法に関しむだ時間を有する強い非線形系であるSMAアクチュエータでの有効性を示した.また,腱の端点の配置を変えることで腱収縮により生じる力学特性が異方的に変わることを示した.これらの原理は人体の制御原理の解析と工学的応用に際して有用であると想定される.(3.身体力学特性のパラメータ推定) 身体特性のモデル化と並行し繰り返し学習制御とパラレルワイヤ駆動装置を利用した人体のパラメータ推定法を展開した.本手法は,人体の計測部位をワイヤ駆動装置により他動的に運動させ,その際にワイヤにかかる反力の計測値に基づき関節空間での特性を推定する.本手法は逆ダイナミクスを用いずに任意の運動軌道生成時における関節空間の特性を動的に推定できる点で有用と想定される.(4.知覚制御系) 発展的課題として前述の皮膚構造における知覚原理を筋紡錘を含むセンサ系へと拡張しその機能を調べた.ここでは,片足立ち姿勢制御を例に基礎的検証を進めた.申請者らの成果では,足裏の機械受容器へ無意識下で機械ノイズを印加すると,SRの効果により姿勢制御機能が向上することが確認されている.本年度は,これを筋紡錘へと拡張し,無意識下で筋が外乱を受ける場合に関して調べた.
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今後の研究の推進方策 |
ヒトは四肢を動かし様々な情報を取得することが知られている.本研究では,第一段階として,この様な動作を伴うセンシングに際して,触覚受容器の動特性を考慮した基礎原理を明らかにするためのモデル化と基礎的実験をおこなった.また,研究対象を筋空間でのセンサ系へと展開し,制御特性の解析,制御アルゴリズムの導出をおこない,人工筋アクチュエータを用いて検証をおこなった.さらに,上腕や下肢の運動をタスクとした実験的検証を進めている. 24年度は以下の課題に取り組む.触覚機能に関わる皮膚構造をモデル化し,上述の動力学モデルと統合することにより,表面変形から伸縮による神経発火までの動特性モデルを得る.その後, 指先の制御系と統合した能動的センサ系について, 知覚と指先動作との関係を明らかにするとともに,センサ系の固有モードを考慮した制御系を構築する.また,先に人工筋において検証した骨格筋の制御モデルを拡張する.さらに,繰り返し学習制御を利用した人体のパラメータ推定法に関しても筋空間での特性推定を視野に入れた形で展開する.片足立ち姿勢制御に関しては,無意識下で筋が外乱を受ける場合に関して実験的検証と解析を進める.他方,発展的課題として上腕を利用したなぞり知覚に関しても同様の検証を行なう.その際,上腕の制御アルゴリズムについて,制御対象の予測の作用についても上腕の平行リンク系モデルに基づき考察する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,23年度に得られた成果に関して国内外の学術講演会での発表等を通じて公開する予定である.また,海外の研究機関との共同研究を遂行する必要があるため,出張旅費を計上する.実験装置としては,23年度に購入した備品を継続利用するとともに,計測と制御用にPC一式とその構成部品を揃えるための予算を計上する.また,原理検証のための実験被験者に関する謝金と,論文投稿料を計上する.
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