研究概要 |
複数の視点から撮像される画像を基にして,カメラの存在しない視点からの画像を推定する任意視点画像合成技術が盛んに研究されている.しかし,複数の画像データに対する処理を行うため,多くの従来法において,必要となるメモリ量や計算量が増大するという問題がある. 本研究では,信号処理・機械学習・情報理論などで注目されている圧縮センシングを利用することで,幾何ベースの任意視点画像合成処理において,合成品質の劣化を抑えつつデータ量と演算量を削減する手法を提案した.圧縮センシングとはスパース性を持つ信号に対して,原信号の次元数よりも少ない数の線形観測から,原信号の完全な再構成を可能にするための方法と条件に関する理論である.提案手法では,画素の位置情報を保持するために,画像内の小領域ごとに圧縮センシングを適用する.それにより,画素値そのものではなく線形観測値を特徴量としたステレオマッチングが可能となり,カメラから被写体までの距離の推定を少ないメモリ量と演算量で実行することができる.次に,推定した距離情報を基にして,線形観測ベクトルを仮想視点へ射影する.最後に仮想視点において,信号を再構成することによって所望の視点における映像を得ることができる. 二視点から撮影された実画像を用いた評価実験では,実験条件を様々に変化させて,合成された仮想視点画像の画質(PSNR; Peak Signal-to-Noise Ratio)を評価した.評価実験により,1) データ量削減の程度と比べて画質劣化は緩やかである,2) データ量を1/16に削減しても視覚的に大きな劣化のない任意視点画像が生成され,データ量削減の程度を抑えれば高周波成分も復元される,3) 大幅な計算時間の削減が可能である, ことが示された.これらの結果から,提案手法によって任意視点画像合成の高効率化が達成できることを確認した.
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