研究課題
3次元濃淡画像の生成型学習に基づく構造解析手法の確立とその医用画像処理理解への応用として,本年度は以下の研究を行った.1.気管支の分岐バリエーションの効率的記述法 気管支の分岐バリエーションについて,昨年度の結果より分岐点位置と枝の長さのみではバリエーションを有効に記述するには不十分であることが示唆された.そこで,分岐の数を付加情報に加えることを検討した.2.血管の分岐バリエーションの記述法 他の木構造として血管を対象として分岐バリエーションの記述法について検討した.肺血管は肺門部において動静脈の分離が非常に難しいため,腹部血管を対象とした.分岐位置,枝の長さに加えて,枝の太さ,親枝および子枝に対する方向,枝の湾曲率を検討した.3.血管の名称対応付け 分岐バリエーションの記述を利用して,血管名称の対応付けアルゴリズムを開発した.機械学習により枝名と分岐バリエーションとの対応を学習し,入力画像の各血管枝に名称を付けた.CT像20例に対する実験の結果,再現率79.4%,適合率90.9%と良好な結果を得た.4.胸部リンパ節の認識 胸部疾病の一つとして,リンパ節検出に取り組んだ.リンパ節は肺がんの進行度診断において不可欠の情報である.リンパ節のバリエーション記述として,リンパ節の存在確率を表すリンパ節存在マップ(アトラス)を構築した.リンパ節の画像特徴と併せて存在マップを利用した検出アルゴリズムを開発した.CT像21例に対する実験の結果,93.3%の精度でリンパ節を検出することができた.5.腹部臓器の認識 肝臓や脾臓といった腹部の複数臓器を対象とした認識アルゴリズムを開発した.各臓器形状・濃度分布のばらつきをそのパターンごとに複数のアトラスで表現し,認識対象とする患者にもっとも近いパターンに該当するアトラスを選択することで認識精度が向上した.
2: おおむね順調に進展している
木構造物体の分岐バリエーションとして,気管支に加えて血管についても検討を進めた.血管は気管支よりもバリエーションが多く,難易度は上がるが,枝の太さ,親枝および子枝に対する方向,枝の湾曲率など有効な特徴を明らかにし,血管の名称対応付けにおいて再現率約8割,適合率約9割と良好な結果を確認した.また,疾病の認識にも研究を進め,胸部リンパ節の存在マップというバリエーション記述法を組み合わせることで,リンパ節の検出精度を飛躍的に向上させることができた.臓器認識への応用においても,肝臓や脾臓といった腹部の複数臓器を対象として,各臓器形状・濃度分布のばらつきをそのパターンごとに複数のアトラスで表現し,認識対象とする患者にもっとも近いパターンに該当するアトラスを選択することで認識精度が向上した.
気管支,血管,リンパ節を対象とした生成型学習とその認識アルゴリズムについて,評価実験に基づいて総合的にまとめる.並行して,肺血管や肝がんへ対象を広げ,他の臓器・疾病に対しても本枠組みが有効に働くことを示す.これは肺結節等の異常陰影の良性,悪性の評価には関与する血管が動脈か静脈かが重要な手がかりとなるためである.認識手法の開発アプローチは24年度と同様である.
備品費としておよそ26万円(画像データ蓄積サーバ),旅費として20万円,その他消耗品費等として25万円,謝金として5万円の計120万円を使用する予定である.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件)
International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery
巻: Vol.8, No.3 ページ: pp.353-363
10.1007/s11548-012-0798-y
Springer special volume on AE-CAI
巻: - ページ: -
Medical Image Analysis
巻: Vol.16, No.3 ページ: pp.577-596
巻: Vol.7, No.3 ページ: pp.359-369
巻: Vol.7, No.3 ページ: pp.371-387
巻: Vol.7, No.3 ページ: pp.465-482
10.1007/s11548-011-0638-5