本研究では,磁気センサとして汎用的に用いられている微小なホール素子を柔らかい弾性材料(人工皮膚)の中に埋め込み,それを感圧感温受容器として機能させる新しい触覚センシング手法を提案する. 昨年度は,シリコーンゴム(人工皮膚)の中に2個のInSbホール素子とそれらの間に円盤状の永久磁石を配置した人工皮膚を作製した.一方は温度依存性を高める定電流駆動,もう一方は温度依存性を弱める定電圧駆動によって駆動し,得られる2つのホール電圧をPCに取り込み,2変数関数によって,接触力と温度を推定し,連続して表示できることが示されたため,今年度は,InSbホール素子1個で同様の機能を実現するべく研究を行った. まず,2個のInSホール素子を接着したものを単一のホール素子とみなして,物体と接触する表面側のシリコーンゴム内部に配置し,円盤状磁石をそれと反対側のシリコーンゴム表面に配置する構造へ改良した.これによって磁石を中央に配置する必要が無く,製作が簡便化された.前と同様の駆動方法により,同時に得られる2種類のホール電圧をアンプで増幅し,その出力信号から接触力と温度を推定しうることを確認した.次に,単一ホール素子のみで同じ機能を持たせるために,駆動回路を切り替えるアナログスイッチを用いて,時分割による二種類のホール電圧を取得する実験を行った.この結果,駆動方法を切り替えながら,二種類のホール電圧を取得・分離し,それぞれのホール電圧をアンプで増幅して出力できることを確認した.これによって,単一のInSbホール素子,二つの駆動源,スイッチング回路等により構成できるため,シリコーンゴムへ組み込むホール素子数および配線数の減少が期待できる結果が得られた.
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