平成24年度は主に時間的相関関係に基づくセンサデータ補完(ARARモデルによる),および,識別結果の連続性に基づく補完(N-gramモデルによる)の検討を行った. 実験の結果,識別結果の連続性を用いない場合のF値は,センサデータの欠損が無い場合は0.789,欠損が生じたセンサを無視した場合は0.734であり,ARARモデルで補完を行った場合は最大0.768であった.これより,時間的相関関係に基づくセンサデータの補完が有効であることがわかった.ただし,ARARモデルによる補完精度は,予測が必要な期間が長期化するほど低下し,約5秒以上の欠損に対して補完を行った場合のF値は欠損が生じたセンサを無視した場合よりも低下する場合が多いことがわかった.また,補完の対象となるセンサの部位によってもその有効性が異なることがわかった. また,N-gramによる補完では,F値は全体的に約0.1から0.2ほど上昇し,識別精度の向上に識別結果の連続が非常に有効に働くことがわかった.しかし,上記の欠損時間や部位に対する有効性の変化の傾向は同じであった. 前述のよう,欠損が生じた部位によって補完の有効性や有効な補完アルゴリズムが異なることは,前年度までに行った特徴量の空間的相関による手法でも同様である.前年度までの結果と併せ,本研究を通して,「センサデータの時間的相関関係による補完」「特徴量の空間的相関関係による補完」「識別結果の連続性による補完」が各々欠損データにロバストな行動認識を行う上で有効であることがわかった.一方で「欠損した部位により有効な補完手法が異なる」こともわかり,個々の補完アルゴリズムの検討とともに,これを考慮した総合的な補完手法の開発が可能であることがわかった.
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