研究課題/領域番号 |
23700234
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 浩介 大阪大学, 産学連携本部, 助教 (90444504)
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キーワード | 歌唱 / 歌声 / 歌唱訓練 / 感覚行動システム |
研究概要 |
本研究は、音場という環境要因がヒトの感覚運動制御に与える影響について基礎的な知見を得ようとするものである。本年度は、前年度に構築された実験系を用いて実験的研究を行った。具体的には以下の通り、歌唱者が残響を伴った自身の歌声を聴きながら歌唱する際に、残響条件によって歌唱者の発声がどのように変化をするかを明らかにした。 (1) 歌唱実験:デジタル残響発生装置による音場呈示システム内で、母音のロングトーン発声からなる歌唱タスクを、歌唱者が発声した。(2) 歌声の収録:(1)の実験の際、歌唱者の前方50cmに設置されたマイクロフォンにより、歌唱者の歌声を収録した。(3) 収録された歌声の聴感的差異の検証: (2)で収録された歌声を実験者が聴取することにより、歌唱者により発声された歌声の聴こえ方が、歌唱者に呈示された残響条件によってどのように異なるかを聴感的に評価した。その結果、残響条件によって、異なる聴感的印象の歌声が発声されることが示された。(4) 歌唱時に歌唱者が感じた感覚的差異の検証:(1)の実験直後の歌唱者に対して実験者がインタビューを行い、歌唱者による主観申告を聴取した。具体的には、各残響条件下において歌唱者がどのように発声を行い、発声時に感じる体性感覚および歌唱者自身の歌声に対する聴感的印象が、残響条件によってどのように異なっていたかを聴取した。その結果、残響条件によって、歌唱者が異なる体性感覚・異なる聴感的印象を感じながら発声を行うことが示唆された。(5) 収録された歌声の音響的差異の検証:(2)で収録された歌声を信号処理により解析し、歌唱者が発声した歌声の音響的特徴が、歌唱者に呈示された残響条件によってどのように異なるかを評価した。その結果、残響条件によって、異なる音響的特徴の歌声が発声されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、音場という環境要因の影響を検証するために多くの実験が必要であった。このため、数多くある選択肢の中から、残響条件によって歌唱者の発声がどのように変化をするかを検証する上で最適な少数の歌唱タスクにまで絞り込むことができない、という問題が生じた。そこで、母音のロングトーン発声からなる少数の歌唱タスクに絞って実験を行った結果、上記の実験結果を得ることができ、この問題は解決された。
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今後の研究の推進方策 |
・実験を失敗なく、スピーディーに行うため、実験系の構築ならびに実験手続きの補助の部分を、引き続きPA(音響技術者)に対して外注する。 ・多数の歌唱者の協力を得るため、オペラ歌唱者、声楽のトレーナー等との人脈を充実化させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
なお、このような次年度使用額が生じた理由は以下の通り。A)今年度は、実験系の改善に時間を要したため、謝金支払いを要する歌唱者を招いた実験が少なくなったため。B)著名な国内外の会議に研究成果を発表するためのデータはまだ得られておらず、旅費・学会参加費を支出する必要がなかったため。 1)実験を失敗なく、スピーディーに行うため、実験系の構築ならびに実験手続きの補助の部分を、PA(音響技術者)に対して外注する。2)歌唱訓練への応用に向けた実験を行う際に、プロ歌唱者・声楽のトレーナー等に対して謝金を支出する。3)連携研究者、研究協力者と打ち合わせを行うために、旅費を支出する。4)著名な国内外の会議に研究成果を発表するために旅費・学会参加費を支出する。
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