本研究では,手が物体を把持する姿勢を,手の関節の動きうる範囲という観点から整理して収集し,データベース化することを目指し,H23年度には把持姿勢を系統的に制御するために必要な,手指関節の動きうる範囲(関節可動領域)のモデル化を,H24年度には実際の把持姿勢データベース用の姿勢データを収集し,それを用いた把持姿勢の生成手法を構築した. H23年度の関節可動領域のモデル化では,関節同士の連動性による制約も考慮したうえで,人のとりうる姿勢の範囲をモデル化した.具体的には,20種程度の規定運動を計測し,それらをカバーする最小限の領域の境界をアルファハルにより表現した.これにより,関節ごとの動きの独立性を前提とした従来の関節可動域表現では含まれてしまっていた「本来とりえない姿勢」を排除し,ランダムに姿勢を生成しても,人間が再現可能な姿勢を生成できるようになった. H24年度はまず,Feixらによる接触領域に着目した把持分類を参考に,把持姿勢データベースに含むべき姿勢の検討を行った.掌側を34の領域に分け,それらの組み合わせのうち,代表的把持で用いられる領域の組み合わせと,そこから部分的に接触領域を減らした組み合わせに対応した把持姿勢を含めることにした.また,できるだけ可動領域の広範囲に分布した姿勢データを含めるため,接触領域間の距離で特徴づけ,距離の広いものと狭いものを計測した.また,新しい物体モデル上のどの位置を,手表面上のどの領域を使って把持するかを与えることで,データベースから必要な姿勢を抽出し,それらの補間および最適化によって最終的な把持姿勢を生成する手法を提案した.
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