平成24年度においては,平成23年度に実証性が確認されたASEがユーザの行動のみならず,ユーザの印象に与える影響について考察する実験を行った.具体的には,ロボットの音声情報にASEを付与した条件(例.「みぎ」+人工音)以外にも,言語情報で自信を表現した条件(例.「みぎだと思います」「みぎのような気がします」),言語情報とパラ言語情報で自信を表現した条件(例.「みぎです!」「みぎかなぁ...」),の三種類の表現パターンを用意し,ASEの有効性の検証と,ASEと人間的表現との比較を行った.宝探しゲームにおいて金貨を選択する機会30回のうち,そのうち15回で自信あり表現,残りの15回で自信なし表現という二種類の自信に関する情報を二種類のロボットが出力するため,本実験は三要因六水準混合計画(被験者間独立変数①:ロボットの種類(二水準),被験者間独立変数②:表現パターンの種類(三水準),被験者内独立変数:自信に関する情報(二水準)),従属変数:30回の機会のうちロボットの予想を拒絶した回数)によって実施され,実験参加者は90人(各水準15人)であった.この実験において,「音程がフラットなASEが付与されたロボットの予想が参加者に受け入れられ,音程が下がり調子なASEが付与されたロボットの予想が参加者に拒絶された」ため,ASEに関する設計的要件を満たした表現は機能的要件も満たしているといえ,提案したASEの要件の妥当性を確認することができた.さらにはASEが人工エージェントの内部状態を伝達する表現として有効であるとも併せて確認することができた.
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