研究課題/領域番号 |
23700249
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
飛谷 謙介 岐阜大学, 産官学融合本部, 中核的研究機関研究員 (50597333)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 周辺視野 / 反応時間 |
研究概要 |
当該年度の研究実績として、以下の3点が挙げられる。1 LEDの点滅に関する反応時間の計測実験において、昨年度行った予備実験における計測視野角が30°刻みであったのに対し、最も反応時間が早い視野角をより正確に計測するため、計測視野角を10°刻みに変更し、実験を行った。その結果、視野角30°付近に反応時間のピークがあることがわかった。また、予備実験である程度の関係性がみられた杆体細胞の分布と反応速度の関係について、本実験結果において検証したところ両者の間には弱い負の相関が確認された。2 1の結果を踏まえ、周辺視野における視覚刺激に対する反応時間は杆体細胞に関係すると仮定し、杆体細胞の光の周波数に対する感度曲線のピークである510nmの光と同じ緑の視覚刺激を用いて反応時間計測実験を行い、赤色の視覚刺激を提示した際の反応時間の結果と比較した。その際、視覚刺激を正確に510nmの光にするため、ヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)上に提示する方法を構築した。結果として、HMDを用いた場合でもLEDを視覚刺激として用いた場合の結果と同様の傾向がみてとれたのと同時に、HMD上に提示した赤色の視覚刺激よりも緑色の視覚刺激を用いたほうがより反応速度が早くなり、かつ安定に反応できることがわかった。この結果は前述の杆体細胞が視覚刺激に対する反応に関係しているという仮説を支持する結果となった。3 視覚刺激提示装置をHMDに変更したことによって、視覚刺激パターンを自由に変更可能になった。そのため、視覚刺激の点滅間隔の比較に対する予備実験を行った。実験は視野角0°~40°まで10°刻みで5点、点滅間隔はそれぞれ20ms、50ms、200msの三種類で行った。その結果、中心視野では点滅間隔の違いによる有意な差は見られなかったが、周辺視野においては点滅間隔200msの場合顕著に反応時間が早かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で本研究はおおむね順調に進展しているが、当該年度に導入した透過型HMDを用いた実験手法において、HMDの画像提示可能視野角が対角で22°と非常に狭いため、視覚刺激を提示したい全ての視野角を同様のセッティングで提示することができない。そのため、実験結果の信頼性が若干足りないと思われる。改善策としては複数のプロジェクタとスクリーンを用いた視覚刺激提示装置の開発が考えられる。また、当該年度の実験は全て中心固視条件かつ両眼視で行っていた。そのため提示視野角と実際に実験協力者が視覚刺激を知覚した視野角と正確に一致していない可能性がある。この問題点に対しては片眼視および頭部を固定した状態での実験を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として以下の4点が挙げられる。1 複数のプロジェクタとスクリーンを用いた視覚刺激測定装置の開発と実験環境の整備。2 より多くの実験協力者に対し実験を行い、当該年度に得られた知見の統計的妥当性を得る。3 より多様な視覚刺激パターンに対する反応時間計測実験を行い比較を行う。具体的には人間の顔をもとにした視覚刺激パターンを考えている。4 以上の実験から得られた知見をもとに、周辺視野において最も注意喚起に適した視覚刺激パターンを決定し、注意喚起情報提示システムの実装を行い、より実際の現場に近い形で最終検証実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画として以下の4点が挙げられる。1 新しい実験環境の構築に伴う物品購入費。2 実験協力者に対する、交通費及び謝金3 本手法の実装に伴う物品購入費4 成果報告に伴う、出版費、学会参加費及び旅費。
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