研究課題/領域番号 |
23700252
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
松本 和幸 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (90509754)
|
キーワード | 感情推定 / 言葉遣い / 単語分析 / シナリオ会話文 / 単語親密度 / 発話役割 |
研究概要 |
1.言葉遣いの変動解析を行うため、本年度では、言葉遣い変動コーパス(シナリオ会話文を対象)を構築し、分析を進め、語彙の変遷や単語親密度、発話役割の出現、俗語などの使用頻度の調査を行った。 2.言葉遣いの変動と、話者の感情との関連を分析するため、シナリオ文脈での感情の変化を分析した。また、コーパスの文脈を理解する際の読み手の感情の変化を、脳波解析装置を用いることで分析を行った。 3.言葉遣いの中でも、一般的な単語とは異なる重要なものとして、若者言葉を分析することを行った。若者言葉と感情表現との関連性に基づいて感情推定を行った。 4.単語が表現する感情を考慮した感情推定に関する研究への応用を試みた。機械学習手法を用いて、文中の単語が複数の感情を持つ際の、感情推定評価を行うことで、従来より複雑な感情を推定できるようになった。 本年度では、従来は分析されることのなかった、会話文における話者と対話相手の感情の変化と感情生起との関連を分析するために、独自に構築した言葉遣い変動コーパスを用いたことで、今後、対話ロボットなどに応用するための新しい推定手法を提案するうえで重要な研究を行うことができた。また、俗語を含む発話文コーパスの拡張を行うことで、会話文中の語彙の変化を検出し、話者の判定や、気持ちの変化の抽出を行う研究の準備ができた。本研究で構築したコーパスおよび分析結果のデータは、研究終了後に、研究成果発表と、感情推定アプリケーションの公開などで随時発表していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度にコーパス構築に遅れがあったが、本年度では、前半にコーパス構築に集中して取り組み、並行して分析・調査を進めることにより、順調な進展がみられた。 また、本研究では、言葉遣いの変動に基づく感情推定の手法を提案することを目的としているが、言葉遣いの変動のほかにも、感情推定に有効な要素として、発話者本人の感情の変化と、対話相手の感情の変化により推定できる、会話場面の雰囲気情報が重要であることがわかった。そのため、コーパスの構築において、感情の種類を、当初考えていたものよりも細かく分類したうえで、タグ付与を5名程度に行わせ、さらに、発話役割や文体の種類(砕けた表現や硬い表現など、6段階)を付与させることにより詳細な分析を行うことに成功した。また、構築できたコーパスの量であるが、500~1000発話程度のシナリオ3種類に対して合計4名の被験者にタグ付与させることができたため、十分な量のデータが得られたといえる。最終年度では、開始当初の目標通り、得られたデータを用いた感情推定アルゴリズムの提案および評価を行えると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度に構築したコーパスのさらなる分析と、感情推定のために不足している情報が無いか調査をすすめる予定である。現在、新たに、感情推定に必要な情報として、話者人格(性格)の推定についても研究をはじめており、既に性格推定に必要な素性辞書の構築もはじめている。これらを用いた感情推定精度の向上を目指し、言葉遣いの変動と性格との関連性の分析を行うことで、まったく新しい感情推定手法の提案を目指したい。 また、シナリオ中の発話文以外にも、対話形式となっているマイクロブログ(Twitterなど)を対象として、感情推定が行えないかも検討していきたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度への繰越額のうち、20万円は、主に評価実験の人件費と、協力者(大学院生)に評価実験補助をしてもらうための計算機資源の増強にあてたい。また、繰越額の残りの25万円を研究成果発表のために使用したいと考えている。 また、次年度の研究費の使用計画として、特に、当該年度にコーパスの整備を行えたため、次年度は研究成果発表に注力したいと考えている。そのため、今年度の後半に、主に成果発表などで使用する予定である。評価実験の進み具合によっては、研究費を利用して、より大規模な実験を行うための、コーパスのさらなる整備(タグの拡充、分析)も考えている。
|