当該年度は,研究目的である,言葉遣いの変動と感情の変動との関連性の分析を,構築したコーパスに基づき行った.この分析の結果,単語の親密度や出現頻度,文の硬さ,発話役割といった情報から,発話者の性格および発話者間の人間関係までを知る手がかりになり得ることが明らかになった.この研究成果を,ヒューマンコミュニケーションに関する国内シンポジウム(HCG2013)において発表した.この研究では,対象となるシナリオコーパスは演劇台本に基づくものであり,一般の対話とは質の面で異なるものの,ある一定の成果が得られた. また,さらにコーパスへのタグ付与結果の分析を進めたところ,付与の傾向が似ている被験者間に,性格面での相関があることが明らかになった.本研究で目的としている言葉遣いに基づいた話者の感情の推定には,言葉遣い情報へのタグ付データが必須となる.このタグ付与に関して,性格ごとの付与傾向を探ることで,話者の性格や読み手(聞き手)の性格に適した感情推定が行えるのではないかという結論に達した.2014年3月開催の言語処理学会年次大会においては,性格推定に関する研究成果を発表した. 研究期間終了後のデータの公開に向けて,構築したコーパスにさらに情報を付与し,整理していく予定である.
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