研究課題/領域番号 |
23700260
|
研究機関 | 久留米工業大学 |
研究代表者 |
河野 央 久留米工業大学, 工学部, 准教授 (60437746)
|
キーワード | コンピュータグラフィックス / アニメーション / 顔形状 / 口唇動作 |
研究概要 |
本研究は、コンピュータグラフィックス(CG)を応用し、個人対応型発音練習システムのための口唇動作CGアニメーション教材を自動作成する方法を開発する。CGアニメーション教材を自動作成するためには、個人の顔形状を自動作成し(自動モデリング)、それを 自動アニメーションさせることにより実現する。前年度は、自動モデリングの過程に着手し、従来の顔形状の作成方法の利点・問題点を分析し、顔形状を「シュリンク・ラップモデリング」により自動的に生成する方法を検討した。今年度は、次のステップである自動アニメーションの開発手法に取り組んだ。 さまざまな学習者における母音の口唇動作を、自動的にアニメーション化するためには、口唇動作を数理モデル化し、一般的な表現で捉える必要がある。そのため、正同定100%のお手本モデルの口唇動作「あ・い・う・え・お」を計測し、それらの実測値を分析することで、口唇動作の共通性を抽出した。これらの抽出された共通性を解剖学的な基準と組み合わせて、基準点の動作時における変化を、座標値の数式表現で表現した。母音の口唇動作を数理モデルとして表現する研究は、口唇動作の分野でも例をみないものと考えている。 基準点の数式表現をコンピュータグラフィックスで作成された顔モデルに適用することで、従来はかなりの日数(制作者の技量による)がかかっていたアニメーション作成が、数秒で自動的に作成できるようになった。また、前年度のシュリンク・ラップモデリング手法と組み合わせることで、様々な顔形状における口唇動作のCGアニメーションがモデリングからアニメーションまで自動化できるようになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の申請時は、初年度:平均的な顔形状と口唇動作アニメーションの作成、次年度:平均的な口唇動作の検証および個人の顔形状への適用、最終年度:学習者ごとの口唇動作教材を自動化し、その効果の検証、という計画であった。しかし、実際には、口唇動作CGアニメーションを自動開発するにあたって、モデリングの問題点が明らかになったため、研究方法を次のように見直した。 (1)口唇動作のCGアニメーションの自動作成をモデリングとアニメーションというプロセスで分ける (2)モデリングとアニメーションの各工程を自動化する (3)自動作成されたCGアニメーションの検証および改善 コンピュータグラフィックスは現象を数理モデルとして捉え、それを視覚化することに長けたツールである。今年度は、その特徴を活かすために、正しい口唇動作(お手本)の中に潜む共通性を数理モデルとして捉え、それをCGに適用することで、数理モデルを背景としたアニメーションの自動化を実現した。当初の研究計画とは流れが変更になったが、最終年度は、ユーザー検証を残すという点では、当初計画と同様である。 従って、おおむね順調に進展していると評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、本研究の最終年度となるので、研究の総括に入る。研究の進捗状況としてはおおむね順調であるので、最終年度の実施内容としては(1)口唇動作の時系列、最大変化時までのタイミングの数理モデル化 (2)CGアニメーションの正同定率の検証 (3)(2)の結果に応じて、口唇動作の数理モデルの改善 の3点を中心に行う。 (1)については、現在、口唇動作時の口唇形状にだけ注目をしているが、実際には発音時のタイミングも、正同定に影響していると指摘されている。そのため、画像計測ソフトウェアを用いて、正同定モデルの口唇動作の最大の変化時までのタイミングなどを計測し、数式で一般表現する。(2)については、(1)を反映させたCGアニメーション教材の品質を確認するために、正同定率の検証をする。(3)については、(2)の結果を踏まえ、正同定率が低い場合は、口唇動作の数理モデルに問題があると予想されるため、数理モデルの改善を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
用途としては、(1)画像計測ソフトウェア (2)学会発表に関わる旅費 (3)口唇動作のCGアニメーションの正同定の調査に関わる謝金 を計画している。 (1)については、口唇動作の数理モデルの精度を高めるために、計測ソフトによる口唇動作の時系列的な変化も注視したいために導入する。(2)は、研究成果を国内学会で発表するための旅費である。現時点では、日本デザイン学会第60回春季研究発表大会を予定している。(3)については、自動作成された口唇動作CGアニメーションを第3者が正しく同定できるかどうか、教材としての品質保証の検証のため、実験を行うために被験者に支払う謝金やRAに対する謝金を予定している。
|