研究課題/領域番号 |
23700261
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平田 祥人 東京大学, 生産技術研究所, 特任准教授 (40512017)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ソフトコンピューティング / 数理工学 / 応用数学 / 時系列解析 / 非線形現象 |
研究概要 |
本研究は、神経、地震、経済取引等に代表される点過程時系列データのための、非線形時系列解析を確立するために、点過程時系列データの埋め込みを実用的に保障する手法を開発することを目的とする。点過程時系列データにおいては着目する時間窓の長さが、一定の時間間隔おきに観測が得られる時系列データに対する埋め込み次元に対応すると考えられる。そこで、本研究では、点過程時系列データの窓の長さを埋め込みが実用的に保障されるように適切に選ぶ手法を開発することを目的とする。3つの手法を試した。1つ目は誤り近傍法の拡張、2つ目はリカレンスプロットの斜めの線の数の減少率を使う手法、3つ目は予測誤差を用いる手法である。1つ目の誤り近傍法の拡張は、点過程時系列データにそのまま用いることができなかった。というのも、窓の中に含まれるイベントの数によって、距離が不自然に変化することがあるためである。2つ目のリカレンスプロットの斜めの線の数の減少率を使う方法もうまくいかなかった。この手法では、埋め込みの長さが十分であれば減少率が短い斜めの線でも一定であるという予想をしていたが、3つの例でそれとは全く異なる結果となった。3つ目の手法である予測誤差では、埋め込みを実用的に保障できた。過去から最も近いパターンを探し、その次の窓を予測として与えた。比較として用いたのは、現在の窓が繰り返されるとする持続予測である。この手法では、決定論的な系から生成された点過程時系列データの例で選ばれた窓の大きさを使うと、最近傍を使った予測により、持続予測よりも良い予測を構成することができた。手法をコオロギの気流細胞のデータ、地震のデータ、為替のデータで検証した。コオロギのデータや地震のデータでは、解析した範囲では、過去の近傍点を使った予測で持続予測よりも良い予測が得られる傾向にあった。為替のデータでは、解析した期間に結果が依存した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の目標は順調に達成された。点過程時系列データに対して、埋め込みを実用的に保障するような手法が、予測を使って構成できることが分かった。また、コオロギの気流細胞、地震、為替の実データで応用可能性を評価した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に構築した埋め込みを実用的に保障する手法を応用して、その応用可能性を吟味するとともに、必要に応じて手法を改良する。実用的な埋め込みを使った応用としては、外力の再構成、方向性結合の検定、カオス性の判定を考えている。これらの応用手法を神経、地震、為替の実データに用いて検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、平成23年度中にもう一度海外に出張して、研究の成果を議論してもらう予定でいた。しかし、研究が進むにつれ、研究途中の段階で議論してもらうよりも、研究がまとまり応用可能性が見えてから議論してもらう方が予算をより効果的に使うことができるという判断に至った。そのため、当初予定していた平成23年度中の海外出張を平成24年度に変更することとした。
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