今後、予測誤差の評価を1ステップで行うのではなく、5ステップ先の時間窓までの予測の予測誤差の合計で評価することにした。その結果、基準をより厳密に用いた時、為替取引のデータで選ばれる時間窓が秒のオーダーから数時間のオーダーになり、埋め込みと考えることができる妥当な結果になった。 まずは、Hirata et al.(2008)の方法を使って、点過程の距離とリカレンスプロットを使って外力の再構成を試みた。予測に最適な時間窓の2倍の大きさの窓を用いた時、予測誤差に最適な時間窓を用いた場合よりもより正確に外力が再構成できた。手法の妥当性を為替取引の外力に1週間の周期性があることを示すことで確認した。 次に、ネットワーク構造の推定を、Hirata and Aihara(2010a)の手法を用いて行った。この場合でも、予測誤差の意味で最適な時間窓の2倍の大きさの窓を用いる時、結合レスラーモデルで構成したネットワークの構造が正しく推定できた。また、風洞の風からコオロギの気流細胞への一方向性の結合が正しく同定できた。 最後に、Hirata and Aihara(2010b)の方法を用いて、決定論的カオスの検定への応用可能性を吟味した。Hirata and Aihara(2009)の方法のように、前後のイベントを入れる場合と入れない場合の16種類の距離の最小値を求め局所的な距離を定め、グラフ上の最短路を求めることで大域的な距離を求めた。周期解に非常に近いカオス的なレスラーモデルのように際どいケースでは正しい判別ができなかったが、レスラーモデルの周期的なパラメータと、良く用いられるカオス的なパラメータ、ローレンツモデルをintegrate-and-fireモデルに入力して得られたスパイク列、コオロギの気流細胞のデータで、手法の妥当性を確認した。地震は、決定論的カオスと整合的とは言えなかった。
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