研究課題/領域番号 |
23700268
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
福光 昌由 (中本 昌由) 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00403585)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 電子透かし / 誤検出率 / 攻撃 / 耐性 / 著作権保護 / ディジタルコンテンツ / 離散ウェーブレット変換(DWT) / 情報埋め込み |
研究概要 |
電子透かしとは,音声・画像等のディジタルコンテンツの中に知覚できないような「透かし信号」を埋め込み,コンテンツに対して著作権・所有権や購入者に関する情報を付加するものである.電子透かしはコンテンツの圧縮・切り取りなどの加工,および第3 者による透かし信号の意図的な削除などの「攻撃」に対して頑強さを持つこと(ロバスト性)が要求される.本研究課題では攻撃を受けて透かし信号がダメージを受けた場合でも,確率・統計的な手法を用いて高精度に透かしの検出が可能になるような新しい検出手法を開発し,確率・統計的アプローチによって電子透かしのロバスト性強化(検出性能向上)を目指す.これにより,ディジタルコンテンツ等,知的創作物の著作権保護技術の発展に貢献・寄与することを目的とする.今年度は,透かし信号を反復してコンテンツ(画像)に埋め込み,誤検出確率を保証した上で検出する新たな方法を提案した.さらに,有無を検出する信号と同時にコンテンツの中にビットパターンデータを埋め込み,検出では透かしの有無を誤検出率に基づいて判定し,さらにビットパターンを復元する手法を開発した.それにより,透かしの検出時に透かしの誤検出率を保証できるだけでなく,ビットパターンの埋め込み・検出も可能となった.実験では,JPEG圧縮・縮小・クロッピング等の攻撃に対して十分な耐性を有することを確認した.したがって,電子透かしを著作権保護に利用する上で,従来よりも信頼性や利便性が向上したと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の特色の一つは,透かしの検出時に透かしが無いにもかかわらず,「有り」と判断してしまう「陽誤検出の確率」(誤検出確率)を,埋め込み係数の分散を元に理論的に計算し,検出した透かし信号の誤検出率を保証する点である.この目標を達成するために,今年度は,透かし信号を反復してコンテンツ(画像)に埋め込み,誤検出確率を保証した上で検出する新たな方法を提案した.さらに,同時にコンテンツの中にビットパターンデータを埋め込み,透かしの有無を誤検出率に基づいて判定し,さらにビットパターンを復元する手法を開発した.それにより,透かしの検出時に透かしの誤検出率を保証できるだけでなく,ビットパターンの埋め込み・検出も可能となった.実験では,いくつかの静止画像に対してJPEG圧縮・縮小・クロッピング等の攻撃に対して十分な耐性を有することを確認した.以上のことから,研究は概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
離散ウェーブレット変換された領域に対して,人間の視覚特性を考慮した上で透かし信号を埋め込む手法を開発する予定である.検出時は透かし入り係数と透かし信号の相関を計算し,相関値の大きさに基づいてビット判定を行う手法が提案されているが,本研究では,この手法を改良し,より多くの情報を埋め込めるように埋め込み・検出方法を再構築する予定である.さらに,電子透かしの安全性を向上させるためのいくつかの試みを実施する予定である.理論的考察,計算機実験に加え,得られたデータのとりまとめ,学会発表,論文作成を行う予定である.これらは,指導している大学院生達と連携して行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,研究成果の発表を行うことが主たる研究内容になると予想されるので,学会発表の旅費,学会の参加費,研究会資料・学術論文の別刷り購入費を主な使途として考えている.また,得られたデータをまとめ,論文を作成するためのパソコン(関連するソフトウェア含む)の購入を予定している.また,実際にデジタルカメラで撮影した自然画像に対する提案手法の有効性を検証するため,デジカメを購入する予定である.
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