24年度は、非線形マニフォールドを学習するグラフ距離に基づく自己組織化マップの学習安定性について、その問題点の明確化および改善策の提案を行い、ジェスチャ認識への応用の可能性について検討した。 本申請研究では、ジェスチャである動画像を画像の集合と考え、ジェスチャが作る画像空間内の軌跡を非線形マニフォールドとして表現することがアイディアである。申請者らが提案しているグラフ距離に基づく自己組織化マップを用いて非線形マニフォールドを学習し、様々なジェスチャの学習結果をさらに上位の自己組織化マップで学習することで非線形マニフォールド間の関係性を解析することを目的としていた。23年度までの研究成果でジェスチャの識別が可能となることを示唆していたが、特定の非線形マニフォールドを示すジェスチャの学習が適切に行われないことが分かった。 この要因を特定するために、下位および上位の自己組織化マップの学習パラメータを様々に変更し、学習の様子を観測した。その結果、下位のグラフ距離に基づく自己組織化マップの学習と上位の自己組織化マップの学習を交互に行う際、上位の結果を下位の学習に利用するコピーバックと呼ばれる操作が主要因であることが分かった。これは、下位の自己組織化マップにおいて、グラフ距離を用いているため、十分な学習を行わないと学習結果に歪みが生じ、非線形マニフォールドを学習できないことである。よって、下位の自己組織化マップを適切に学習するために、下位と上位の学習量を適切に配分するパラメータ決定法を実現した。これにより任意の形状の非線形マニフォールドの学習が適切に行うことができ、ジェスチャ認識という実問題への適用可能性が十分であることを示唆した。
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