研究課題/領域番号 |
23700273
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研究機関 | 中央学院大学 |
研究代表者 |
田村 謙次 中央学院大学, 商学部, 准教授 (30367635)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ハイブリッド / 共進化 / 遺伝的アルゴリズム / 分布推定アルゴリズム / 進化的計算 |
研究概要 |
研究目的として挙げた内容は、「進化的計算における解の局所的な探索と良質な解の破壊を回避することによる解探索の高精度化・高速化を目的としている」であったが、本年度においては、従来手法である分布推定アルゴリズムにおいて、求める解を全体ではなく部分的に推定を行うことによる局所的な探索を行い、推定された解の関連性(ネットワーク)を遺伝的アルゴリズムでの遺伝的操作の際に利用することにより、良質な解の破壊を回避し高精度の解探索を実現した。適用した問題は、ベンチマーク問題で、従来手法と比較して良好な値を示すことが出来たが、大幅な改善には至らなかった。しかし、典型的な問題において、従来手法よりも良好な値を示すことが出来たことは、該当する研究分野で最も期待される領域の一つである実問題(我々の社会に現実に存在する大規模で複雑な問題)において、提案手法が有効に働く可能性があることを示すことが出来たと考えられる。今後の課題としては、より局所的な探索と大域的な探索をダイナミックに行う必要がある問題に適用し、その効果を確認することである。 研究成果は、以下の発表を行った。・「遺伝的アルゴリズムと局所探索型分布推定アルゴリズムによるハイブリッド手法」、平成24年電気学会全国大会 、3-044, pp.67-68(第3分冊), 2012.また、2011年度の成果を国際会議に投稿し、採択された内容の発表を2012年度ではあるが4月に行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案した手法を基本的なベンチマーク問題における線形の性質を持つ問題や、複雑な構造を持つだまし問題に適用した結果、従来手法よりも良好な結果が得られたため、数値実験に関する成果はおおむね順調に進展していると言えるが、提案手法が有効に働く理由などの定量的な解析や、どのような性質の問題が得意あるいは不得意かという考察および解析なども、今後、行う必要がある。また、提案するハイブリッド手法では、分布推定アルゴリズムが部分的な解探索を行うことにより、局所的な解推定を実現し、さらに、分布推定アルゴリズムで形成された部分解の関係性を遺伝的アルゴリズムで利用することにより、良質な解が破壊されることを防ぎ、かつ、大域的な探索を実現している。したがって、性能比較のために人工的に用意されたベンチマーク問題ではなく、さらに実用的で、提案手法が有効に機能することが期待できることを確認出来たので、実世界における応用的な問題であるタンパク質の立体構造推定に適用するためのプログラムを作成中である。タンパク質の立体構造推定問題は、その構造を予測するためには、アミノ酸の塩基配列を局所的な探索と大域的な探索とを行う必要があるため、提案手法が有効に機能することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、アイデアを具現化するためのプログラミングを行っており、それを完成させた後は、具体的な実験等を行う予定である。特にタンパク質の構造推定問題を行う予定である。特にキーポイントになる要素としては、分布推定アルゴリズムによる局所的な探索において、タンパク質の構造は、二次構造、超二次構造、ドメイン、三次構造と規模が大きくなるが、どの規模までを探索の対象範囲とすることで分布推定アルゴリズムが効果的に働くのかを考慮することや、構築された遺伝子座間の関係性のネットワークを遺伝的アルゴリズムでの大域的な探索に利用するに当たり、ドメインおよび三次構造を効果的に探索するためのパラメータチューニングなどの必要性があると考えられる。並列化に関しては、提案手法がハイブリッドであるため、遺伝的アルゴリズムと分布推定アルゴリズムをそれぞれ独立したシステムとして機能する部分に関しての並列化は比較的容易である。また、分布推定アルゴリズムにおいても、部分的なネットワークの構築に関して並列化が可能であるため、その点が研究の特徴と優位性となると考えられる。並列化に関しては、コンピュータ上での仮想的な処理あるいは所有しているコンピュータによる実機での並列化のいずれかで行う予定である。また、ゲーム関連のレベルジェネレーションに関する研究については、提案手法がタンパク質の立体構造推定問題により有効に働くと考えられることから、立体推定問題を先に行ってから取り組む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の「旅費」および「その他」を次年度に使用する予定であるのは、投稿し採録された国際会議の開催が、H24年4月2日~4日であり、関連費用のいくつか(宿泊費、参加費など)は、開催以降に精算をする必要があったため、すべての費用をH24年度分として、まとめて精算を行うこととしたためである。また、次年度においては、物品費に関しては、主に文献の購入に充て、旅費およびその他の項目に関しては、成果発表(学会発表、学術論文投稿)に使用する予定である。
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