研究課題/領域番号 |
23700277
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
上浦 基 東京電機大学, 理工学部, 助教 (10516181)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 複雑系 / アブダクティブ推論 / 市場変動 |
研究概要 |
我々は日常生活の中で様々な推論を行うが,その中には確実性が保証された演繹的推論ばかりではなくときには間違いも起こる不確実な推論が含まれており,アブダクティブ推論はそういった不確実な推論の一種である.このような人間の認知過程としての推論は経済現象にも大きな影響を与えるものと考えられる.本研究の目的は,(1)時系列データに適用可能な形式によるアブダクティブ推論の数理モデル化,(2)人間の行うアブダクティブ推論が,株式市場暴落の原因となり得ることを,数理モデルと認知実験によって示すこと,またそのための実験システムを構築すること,である.平成23年度では主にアブダクティブ推論の数理モデル化が進められた.これまでアブダクティブ推論の数理的側面はS-Gダイアグラムの各辺に割り当てられたパラメータや関数に対する操作として理解されてきた.ここで,対象となる関数が一般の陽関数であるが故これらの操作の割り当てが恣意性を持つ可能性があったが,対象を一般の関数から有限次元線形写像へと制約することによりこの割り当てが必然的であることを明らかにした.これまでアブダクティブ推論は,S-Gダイアグラムの一操作としてのみ理解されていたが,ベクトル空間の双対性および行列(線形写像)に対する一般逆行列という二つの操作の組み合わせによって定式化されることが明らかになった.また,これらの構造を前提とすれば,パラメータ変動に関するコーシー分布やシステム中での選択肢生成能を構成できることを示した.これらの結果は,研究会発表4件,シンポジウム講演1件,国内学会発表1件,国内学会論文誌投稿1件(投稿中)によって公表した.また本研究は,第12回計測自動制御学会SI部門講演会において優秀講演賞を受賞し,また前年度に引き続き平成24年度も東北大学電気通信研究所共同プロジェクト研究の一部に採用されるなど評価を受けた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,(1)時系列データに適用可能な形式によるアブダクティブ推論の数理モデル化,(2)人間の行うアブダクティブ推論が,株式市場暴落の原因となり得ることを,数理モデルと認知実験によって示すこと,またそのための実験システムを構築すること,である.これらの目的を達成するプロセスはおおむね順調に進展している. 「研究実績の概要」で述べた通り,平成23年度では主にアブダクティブ推論の数理モデル化が進められた.数理モデルが洗練されたことにより,当該の理論的枠組は株価変動の解析に留まらないものになりつつあり,特にアブダクティブ推論と共創システムおよび内部観測との関係を理解する上で大きな進展があった. 他方,認知実験(株価予測課題)に使用する実験用アプリケーションはJava を用いて開発中である.本アプリケーションでは,株価時系列(過去の実データおよび仮想市場から得られるもの)を被験者に提示する.被験者は次の時刻の株価を予測しスライダーから予測株価を入力する.「研究実施計画」に記載の通り,平成24年度前期には本アプリケーションを用いた予備実験と株価モデルの修正を行った後,本実験を実施する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」で述べた通り,本研究はおおむね順調に進展している.平成24年度も,引き続き「研究実施計画」に沿って研究活動を遂行する.研究費の使用に関しても計画通り行われる予定である. 平成24年度前期では,実験用アプリケーション修正と株価予測課題の本実験を行う.すなわち,予備実験での結果を解析しアプリケーション用株価モデルの修正を行うとともに,修正したアプリケーションを用いてボランティアの被験者による株価予測課題の本実験を行う. 平成24年度後期では,株価予測課題本実験の解析とまとめを行う.本実験の結果を解析してまとめ,国際誌への論文投稿を行うとともに,国際会議に参加し研究成果を報告する.本研究課題では1回につきひとりの被験者で実験を行うが,後に本研究を発展させるために,複数の被験者が株価予測課題に参加して市場株価を形成することができるように本実験のシステムを設計しておく.このため,本実験のシステムはクライアント-サーバ型ネットワーク上に実装する.本研究課題内で確立された1クライアント1サーバシステムは,nクライアントのシステムへ容易に拡張可能となる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度も,引き続き「研究実施計画」に沿って研究活動を遂行する.このため研究費の使用に関しても「交付申請書」記載の通り行われる予定である. 具体的には,アプリケーション開発,データ解析および本実験サーバに用いる計算機リソースの購入,および国際学会参加の為の旅費が主な支出となる予定である.
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