研究課題/領域番号 |
23700278
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
長尾 大道 統計数理研究所, データ同化研究開発センター, 特任准教授 (80435833)
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キーワード | クラウドコンピューティング / ベイズ統計学 / データ同化 |
研究概要 |
近年のハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)環境の大幅な飛躍により、様々な科学分野において大規模な数値シミュレーションが実施されるようになってきた。超大型単体スパコンは国家予算級の開発費を必要とするため、これまでのような単純な大型化指向路線からの変更を迫られている。そのため、今後ますます大規模化していくことが確実なシミュレーションを実施していくための次世代HPC環境を整備する必要性が日に日に高まっている。次世代HPC環境の候補の一つとしては、クラウドコンピューティングシステム(CCS)が有力な方法として提案されている。一方、CCSの科学利用についてはまだ議論が始まったばかりである。この時点で、CCSに適した科学計算のためのアプリケーションソフトを今から開発しておくことは、まさに時代を先取りするものである。 平成23年度の準備研究を踏まえ、本年度はデータ同化システムの本格的な開発に着手した。特に複数のPCクラスタ群によって構成されるCCSについては慎重な実験を繰り返し実施し、問題点を洗い出した。一通りの開発を終えた段階で、実際問題への応用例として統計数理研究所と遺伝学研究所が共同研究を開始した細胞内流動に関するデータ同化研究に対してDASICCを適用した。この共同研究においては、PIV (Particle Image Velocimetry)法を用いて細胞内における細胞質流動の2次元平面内速度場を観測し、その速度場データと流体シミュレーションとをデータ同化法によって突き合わせることにより、細胞質粘性等の物理パラメータを推定し、さらには細胞核の移動のメカニズム等について物理的に解明することを目指している。この共同研究への応用によってDASICCのパフォーマンスを十分評価した後、専用のユーザインターフェースを開発し、インターネット上を通じて一般に公開する準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発したDASICCを、平成24年度の最終目標であった細胞内流動に関するデータ同化研究に対する適用まで実施し、また細胞質粘性等の物理パラメータを推定することに成功した。このことから、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、細胞内流動に関する流体の運動方程式を、前年度に開発したマークアップ言語で記述し、シミュレーションをDASICC内で実施できるようにする。次にPIVで得られた速度場データを入力してDASICCを稼働させることにより、細胞内の物理パラメータを決定する。この共同研究への応用によってDASICC のパフォーマンスを十分評価した後、専用のユーザインターフェースを開発し、インターネット上を通じて一般に公開する。これらの研究開発の成果は、統計学ならびに情報学に関連した国内学会および国際学会において発表し、数編の論文にまとめた上で国際誌へ投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の最終年度となる平成25年度は、開発したシステムのテストやインストール作業について外注する。また、研究開発の成果を学会等で発表するための旅費に充てる。さらには、論文出版に係る費用に充てる。
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