本研究は地域がもっている写真やWebページといった地域情報資源を利用してディジタルアーカイブを作成し、ユーザが所持している携帯情報端末に現在位置とユーザの希望する年代をキーとしてデータを配信するシステムに関する研究である。現在、各自治体によって写真や絵はがきといった地域情報資源アーカイブが構築されているが、その用途は旅行関係の会社に地域の観光資源の資料として使われるに留まっていることが多い。そこで、本研究ではそれらのデータを利用したシステムの試作を目指したものである。研究では、稚内市の協力を得て市立図書館のデータのディジタル化を行い、メタデータを付与することを行ってきた。本研究で得られた知見は、自治体の講演会などで発表を行っており、今後ガイドラインを文書として作成することを予定している。 また、本研究で作成したのディジタルアーカイブは地域に長く住んでいる高齢の住民の興味を強く引くことができた。それらの知見を元に、2013年度は病院およびセラピストの協力のもと、認知症の高齢者を対象にディジタルアーカイブとWebアーカイブを利用した回想法による認知症の改善についての実証実験をおこない、新たに得られた知見を論文にまとめた。回想法とは認知症の参加者がセラピストと共に過去に使っていた道具や、風景の写真等をもとに思い出について語り合い、認知症の症状の改善を目指すものである。本研究はディジタルアーカイブの利用法についての研究を主眼においており、ディジタルアーカイブの応用的利用として将来性および必要性が認められるものである。
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