研究課題/領域番号 |
23700289
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研究機関 | 学習院女子大学 |
研究代表者 |
江藤 正己 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 講師 (10584807)
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キーワード | 情報図書館学 / 情報システム / 情報検索 / 共引用 / 引用索引 / 文脈情報 |
研究概要 |
本研究の目的は,共引用関係を利用した検索において,その長所「キーワード検索では見つけられない適合文献を発見できる」を強化し,より高度化させることである。本年度は主として以下の三つをおこなった。 1. 昨年度に考案した「共引用関係を拡大的に解釈し,論文本文中の文脈情報を活用する検索手法」の性能を,簡易的なテストコレクションのうえでさらに精査した。開発手法の特徴のうち特に「拡大的解釈」の部分に焦点をあて,開発手法の検索結果の上位と従来の共引用関係に基づく手法の検索結果の上位に含まれる文献を比較する検索実験をおこなった。その結果,開発手法の方が,従来手法よりも検索結果の上位に多くの適合文献を含むことが明らかとなった。ここで明らかとなった結果について,国際会議のワークショップで報告した。 2. 開発手法を評価するためのテストコレクション構築作業を進めた。具体的には既存のテストコレクションと文献データベース中の情報とを組み合わせる作業をおこなった。その結果,本格的な検索実験に利用可能なレベルのテストコレクションを構築できた。 3. 本年度に構築した前述のテストコレクションを用いて本格的な検索実験をおこなった。開発手法と従来の共引用関係に基づく手法の検索性能を,検索結果のランキング能力を評価するための指標を用いて評価し,それらの比較をおこなった。その結果,検索結果のランキングに着目した場合でも,開発手法の方が従来手法よりも優れていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検索手法の基本的な部分は既に開発できており,また従来の共引用関係に基づく手法との比較においても,開発手法の検索性能の優位性を示唆する実験結果が得られている。しかしながら,他の検索手法との比較や組み合わせによる効果など応用的な開発が当初の予定と比べて不十分であるため,全体としては当初の計画よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まず,開発手法のランキング能力と従来の共引用関係に基づく手法のランキング能力を比較した結果を精査し,どのような点がどのように優れているかについてとりまとめをおこなう。その結果をふまえたうえで,開発手法と他の検索手法との比較や組み合わせによる効果など応用的な開発をおこない,文献検索手法全体の観点からみた場合の開発手法の意義を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
主たる理由は,昨年度にテストコレクションの作成方針を変更し未使用額が生じていたことである。本年度は,当該の未使用額を用いて応用的な部分に着手することはせず,検索手法の基本的な部分の開発をおこなうことを優先した。より具体的には,変更後の方針に基づいたテストコレクションの作成を進め,またそれを用いて開発手法の基本的な検索性能を評価する検索実験をおこなった。そのため,継続して次年度使用額が生じている。 開発手法のランキング能力と従来の共引用関係に基づく手法のランキング能力の比較結果を報告するための経費や,開発手法の応用的な開発をおこなうためのテストコレクションのデータ整備,及びそこで得られた成果を発表するための経費に充てる。
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