研究課題/領域番号 |
23700291
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
岩崎 洋平 熊本高等専門学校, その他部局等, 助教 (90442483)
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キーワード | 情報サービス / 図書館情報学 / 複合現実感技術 |
研究概要 |
今年度は,前年度までに開発したナビゲートシステムとアバター生成エンジンの改善および実証実験を行った. 蔵書が収められている書棚までユーザを案内するナビゲートシステムについては,実際の図書館において運用できるシステムを構築した.まず,書棚および通路の位置情報をマップ化し,蔵書がどの棚に収められているかという情報のデータベースを作成した.ナビゲーションのスタートとなるユーザの位置は,書棚に貼付したマーカ(マップ情報とリンクされている)を認識することで特定した.また,ゴールとなる蔵書が収められている書棚の位置の特定にはデータベースを用いた.これらのスタートとゴールおよび通路の位置情報を用いてダイクストラ法により最短経路の計算を行い,案内情報(ユーザの通るルートを示す最短経路CG(コンピュータグラフィックス)・進行方向を示す矢印CG・目的地を示す目的地CG)を生成する.生成されたこれらの案内情報は,Android端末上において,現実空間の映像に重畳表示される.加えて,マーカを用いずにユーザの位置を特定するために,近距離無線通信規格の一つであるZigbeeを用いた室内位置検出についての検討も始めた. アバター生成エンジンについては,貸出履歴に応じて3DCGで表現されたアバターが生成・変化されるエンジンを構築した.このエンジンでは,データベースサーバに構築された簡易的な図書館情報データベースを用いて,疑似的な貸出を実現し,その情報に応じてアバターを生成・変化させ,3DCGとして表示する.このようなアバターの変化が図書館の利用率向上のためのインセンティブ(意欲向上のために外部より与える刺激)として有効であるかのアンケート調査を106名の高専生および教職員に対して実施した.その結果,アバターおよびアバターの変化がユーザの興味を強く引いていると評価でき,本システムの有用性を確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画は,「Wi-Fi電波をナビゲートシステムの構築」・「キャラクター生成エンジンの開発」・「試行稼働実験」であった. ナビゲートシステムの構築においては,前年度までに作成したマーカ型システムを実際に図書館に適用するための改良を中心に行い,Android端末上において,案内情報(ユーザの通るルートを示す最短経路CG(コンピュータグラフィックス)・進行方向を示す矢印CG・目的地を示す目的地CG)を現実空間の映像に重畳表示するシステムを構築した.また,Wi-Fi電波によるシステムについて検討を行い,Wi-Fi電波ではなく近距離無線通信規格の一つであるZigbeeを採用し,その実験・検討を行うための準備を行った. キャラクター生成エンジンの開発においては,前年度までに開発したプロトタイプエンジンから,疑似的な図書館の貸出情報から実際に3DCGのアバター(キャラクター)を生成するエンジンを構築した. 試行稼働実験については,マーカ型ナビゲートシステムを実際に図書館で稼働させる実験を行った.また,キャラクター生成エンジンでは, 106名の高専生および教職員を対象としたアンケート調査を実施した. 以上により,初年度の目的はほぼ達成できたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,Zigbeeを用いたナビゲートシステムの構築を中心に,システムの図書館での稼働実験による評価・検討を行っていく予定である. ナビゲートシステムの構築においては,より安定してユーザの位置を特定することのできるシステムの構築を目指す.場合によっては,今年度構築したマーカ型システムと組み合わせることも検討していく. さらに,キャラクター生成エンジンと組み合わせてシステム(MRLS)を構築する.その後,実際の図書館において稼働実験を行い、システムの評価を行う.評価の対象としては、蔵書検索システムの正確性・使いやすさ、MR Librarianの変化に対してユーザが興味をもつかどうか、そしてMRLSが図書館利用率向上のためのインセンティブ・プログラムとして機能しえるのかなどを予定している。また,本研究によって得られた研究成果を国際会議・論文誌などを通じて発表する。本研究で開発を予定しているMRLSの仕様は、Webページ上に公開し、誰でも本システムを構築できるように、情報公開を実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
MRLSを稼働させるためのPC・タッチパネルなどの購入を予定している.また,研究成果の学会等での発表(国内および国外旅費)や,論文投稿のための研究成果投稿料として使用することも予定している.
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