今年度は,主にマーカを用いることなく屋内(図書館内)にて位置検出を行う方法についての検討を行った. 研究計画では近距離無線通信規格の一つであるZigbeeを用いる予定であったが,図書館側の都合などもあり,デバイスを一切設置することなく画像処理技術のみを用いる手法について開発および検討を行った.特に,今年度は書棚内での図書位置を複合現実感技術によりユーザに提示するシステムを構築した.また,本システムのための実世界と仮想物体の位置合わせ手法として図書館環境に特化した本棚領域の頑健な推定法を提案した.この手法では,特徴点としてエッジの探索により本棚の枠に相当する画素を複数個抽出して,枠部分の推定を繰り返しながら本棚の領域を特定する.推定方法としてロバスト推定に基づく手法とHough変換に基づく手法を提案し,本棚領域に対する精度を実験的に比較して,それらの有効性の調査を行った.その結果,Hough変換に基づく手法の認識率は平均で83.3%となり,本棚領域の推定に対して有効であることが示唆された.また,特定された本棚領域の情報を利用して,MR位置合わせを行う手法の検討およびプロトタイプシステムの構築を行った. 以上により,MRLSによって最も重要なナビゲーションシステムの精度の向上および新たな機能の追加(書棚までの案内から書棚内での図書位置の案内まで)が可能となった.これにより,本システムの用途を図書館ユーザから図書館側(司書)に拡大することができた. また,以上の結果を含めて本システム構築の成果および仕様について,学会発表などを行い広く情報を公開した.
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