近年スマートフォンに代表される身近なインターネット環境の普及に伴い、個人の様々な知識を集合的に活用する様々なアプリケーションに対する期待が高まっている。そこで、本研究では、集合知の構成要素についての事例に基づく理論的な検討を、最初のステップとして設定している。その結果、集合知の一つの基盤的要素としては「観測・観察」に代表される、社会的計量技術が重要であることがわかる。これまで、社会的計量技術としては、投票と市場メカニズムにおける価格形成が代表的な技術として君臨しており、それぞれ社会的意思決定における正統性を担保する技術として活用されている。言うまでもなくそれらは投票は政治分野で、また価格は経済分野で利用される技術ではあるが、今日の情報化社会の文脈では、様々な個人や組織の行動がネット上で観測される(例としてはfacebookのオープングラフ技術)ことから、それらの技術の融合分野における様々な新手法が期待されている。そこで、投票技術と価格形成プロセスを融合させた新しい集合知実験を2011年8月より展開し、その有効性を検証している。現在のところ、その結果わかったことの一つは、いくら理論的に正しく、新しく簡便な計測技術が開発されたとしても、それを受容して利用するユーザ側に理解されるまでが大変でありあまり利用が進まないという点が問題である。その点で、投票や市場メカニズムのような動作原理に対する理解が進んでいる仕組みは参加者に対する説明が不要であるため、強い技術であるということが言える。また、今年度の後半には、それらの計測技術とは別に、アイディアの融合・発達分野での集合知の実験として、政策形成を促進させるアプリケーションの開発に取り組んでいる。2012年度にはこれらの実験を実施できる見込みである。
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