研究課題/領域番号 |
23700298
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹村 匡正 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40362496)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | シリアスゲーム / 病院経営 / マルチプレイヤー |
研究概要 |
病院経営を実際的に学ぶために、病院のモデルを構築し、プレイヤーが病院長となって経営の意思決定を行えるシリアスゲームの構築を行った。またより学習効果を高めるために、プレイヤーどうしが争える形のゲームの構築を目指した。具体的には、患者および医療従事者の「満足度」という指標を導入し、相互に関連するモデルとした。バランスシートを注意しながら病院経営に関する意思決定を行い、その上で他のプレイヤーの戦略を見た上で、自身の戦略を練る必要がある。ゲームとしては、Web上のネットワークゲームとしてプロトタイプを構築し、実際に医学部の学生(医学科4年生)14人を対象に、実際にゲームを行ってもらった。評価はやはり楽しく学べる、病院経営に対して実感が持てるという評価と共に、ゲームとしての問題点(タームを揃える必要がある、意思決定と結果の因果関係が把握しづらい時がある、ゲームとしてレスポンス)などの意見が得られた。また、一斉にタームを合わせるのは複数の施設間などで利用する場合は実際的ではないので、ケータイやスマートフォンなどからのアクセスによる、「ソーシャルゲーム」的な要素も必要だと思われた。医療に関係の無い学生(情報学研究科)には、病院経営そのものがどういうものかを学びうるかを、スタンドアロンとネットワーク型のゲームをそれぞれプレイしてもらい、その学習効果を評価した。こちらは、ゲームを利用することそのものに対しては高評価だったものの、複数プレイヤーだとタームを合わせる必要があることから、じっくり考えることができないという意見であった。学習効果を考える場合、学生のバックボーンや、時間の共有方法について、もう少し進んだ方策を考える必要があることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、実際にモデルを構築し、プロトタイプのシステムをサーバー上に実装し、学生による評価実験を行うところまですすめる事ができた。また、アンケートおよびフリーディスカッションを行い、病院経営を実感しうる教育ツールとしてのシリアスゲーム、特にマルチプレイヤーによる教育効果の高さが確認できた。ただ、実際に本システムが教育に利用されると想定していたのは、本実験の医学部の学生、および医療・福祉マネジメント系の学部・学科をもつ大学である。これらの学部・学科の多くは病院等の現場を持たず、また持っていたとしても実際の病院経営に携わることは不可能である。こちらでの評価を出来れば今年度中に行えればよりベターであったが、プロトタイプのシステムの構築が遅れたこともあり、対象としていた大学の講義スケジュールと合わせることができなかった。(これは、先方の都合(組織改組による講義受講人数の変化)という意味合いもある)
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究において、プロトタイプの構築と共に学生に対する評価まですすめることができたが、そのなかで得られた知見、特にゲームそのものの完成度を高めると同時に、意思決定と結果に対する因果関係の透過性を、検討する必要がある。特に、データをどういうふうに見せるのかについては、多くの検討の余地があるように思われた。また、ゲームそのものの進行、特にターム性を如何に制御するのかについては、本研究の最終目的であるインターカレッジおよび多施設でマルチプレイヤーをゲームを行うことによって、シリアスゲームによる教育効果ばかりではなく、リアルに近いシミュレーション基盤を構築することを達成するには、システムの頑強性を考慮したシステムとして構築する必要がある。特に、DPCのような医療制度改革などは、その意義を理解した上でプレイヤーの行動がどう変わるのかなど、今後の本研究の発展にも大きく影響することから、実際に授業の演習として利用しうる頑強な、かつクオリティの高いシステムとして構築する必要がある。と考える。その上で、実際に数十人規模の複数の大学間での本システムの利用を目指したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究結果を踏まえて、システムの構築は勿論のこと、一応の評価までできたことから、学会の発表および論文投稿を行う。その上で、本システムに興味をもっていただいている大学や施設等に出向き、実際の利用について協議を行うつもりである。前年度は、実際の評価実験を行うにあたり、医学部の学生の募集(二十数人)を行ったが、直前にシステムのトラブルがあったこともあり、実験日時を変更する必要があった。この予定変更によって、予定していた謝金を支出できなかったことにより、研究費を繰り越すことになった。次年度はサーバー機の準備と共に、少し実験的に行いたい、スマートフォン等からのアクセスによる本ゲームの利用可能性についても検討する。
|