研究課題/領域番号 |
23700301
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田中 幹人 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70453975)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / フィンランド / イギリス / イタリア / アメリカ |
研究概要 |
本研究の2011年度においては、ウェブ上においてジャーナリズム活動を行う組織に対して、調査票調査やインタビュー調査を行い、その成果をもとに、データベースを構築することを目的としていた。この当初計画に則し、フィンランド、アメリカと協働でウェブ・ジャーナリズム活動の横断的調査を実施した。本研究費の充当・担当部分である日本国内調査について、2011年度後半~2012年度前半にかけて25社を調査している(2011年度中には10社のインタビュー成果を完成、残り15社に関しても初期インタビューは完了済み)。この成果は、欧米との協働データベースとして("Sustainable Business model for Journalism(SuBmoJour); http://www.submojour.net/ )。構築されつつある。インタビューからは、ジャーナリズムの規範的問題に関してアーキテクチャがどのような影響を与えているか、あるいは実践者が規範的問題に関してどのような視座を持っているかを、ジャーナリストや経営者などに対するインタビューを通じて明らかにすることができた。 また、当初は2012年度に予定していた内容であったが、前倒しするかたちで、国内の個々のジャーナリストがどのようにソーシャルメディアを利用しているかについて、8名の中央・地方のジャーナリストに対して詳細なインタビュー調査を行った。このインタビュー調査からは、長らくは理想論に過ぎなかったジャーナリズムの議題「構築」機能に際して、ソーシャルメディアという双方向性アーキテクチャが登場したことにより、伝統的メディアのジャーナリストがそれを利用している様式の一端が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年3月に発生した東日本大震災は、本研究にも影響を与え、調査対象となるジャーナリズム組織・個人がインタビューに応じてくれない等の支障を来した。しかし夏頃からは次第に事態が改善し、当初予定していた調査を進めることが可能となった。当該年度に実施した主な調査は下記の通りである:1.オンライン・ジャーナリズム組織の横断的調査:海外(フィンランドを中心とした欧州及びアメリカ)との共同研究調査"Sustainable Business model for Journalism(SuBmoJour)"として、メール、掲示板、スカイプなどを通じて調査項目の議論と策定を行ったうえで、調査を開始した。2011年度には10社の調査が完了し、2012年度初頭には残る15社の調査が完了する予定である。なお、この研究成果は統一データベースとして http://www.submojour.net/ にて公開されている。2.ジャーナリストのソーシャルメディア使用状況調査:地方・中央を含め、8名の新聞社所属のジャーナリストに対し、詳細なインタビュー調査を行った。ツイッターなどのソーシャルメディアを、伝統的メディアのジャーナリストがどのように用い、またその情報を巡る相互補完的な関係が成立している状況を調査した。 以上の様な状況から、本研究は当初計画からは少し遅れ気味であるものの、おおむね順調に進展しているものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、主に下記の3点について研究を推進する予定である:1.オンライン・ジャーナリズム組織の横断的調査:5月初頭に、フィンランドのヘルシンキ及びタンペレで、協働研究者が集まっての会議を開催し、国際調査の第一段階の成果を持ち寄ると共に、調査報告書の完成に向けて議論を行う(但し、旅費については、今回はフィンランドアカデミーの招待によるもので、本研究費は使用しない)。その後、報告書の取りまとめとともに、共著論文の執筆を行う。2.追加インタビューによる補強と分析:上記1と関連し、ウェブ・ジャーナリズムについて他国と比較した場合に日本に特異的と思われる事象に関し、追加のインタビュー及び分析を行う。3.東日本大震災を巡るウェブ・ジャーナリズムの機能と効果の分析:2011年度調査は東日本大震災の影響を受けたが、同時に研究の観点からは、この震災は伝統的メディアとウェブメディアの相互作用が図らずも進展した事例と言える。2011年度の調査においても、インタビュイーは「震災後の対応と変化」について述べることが多かった。こうした点からは、メディアの過渡期において震災がもたらした影響を精査することで、後代に資し、また未来を占うための情報を獲得出来るものと推察される。具体的には、(1)専門知を巡る伝統的メディアの情報発信とそのソーシャルメディア受容、(2)ローカルな文脈における伝統的メディアの影響とそのソーシャルメディアにおける受容様式、を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、第二段階の調査のための国内旅費(福島方面)、研究の取りまとめのためのインタビューの整理、国際学会での成果発表などを中心に使用する予定である。
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