(1) データベース化に関する成果 本研究はトウェインの旅行記5作を横断検索できるデータベースの作成にあった。成果はすでにウェブ上で公開し、その当初の目標を達成している。月例で開催されているトウェイン研究の専門家が集まる研究会に参加し、相談を交えつつ、有用性を重視して単語および語句による検索が可能となるようなデータベースを構築した。検索方法は出来るだけシンプルな方が利便性は高いと考え工夫した。なお、データベースの検索機能は他の文献への応用も可能となっているため、他のトウェインの作品を加えることもできる。すなわち、理論的にはeBookとしてweb上に公開されているHTMLテキストすべてを横断的に検索するデータベースの構築も可能であり、ここに本研究が目指す今後の発展の余地がある。 (2) 副次的に行った関連する研究成果 本研究の遂行にあたり、トウェインの旅行記研究に関するいくつかの副次的な研究成果があった。旅行記全盛の時代と呼ばれた19世紀にあってもトウェインの旅行記が他に類を見ないほどの評判を呼んだ理由について、同時代の他の旅行記作家の作品を参照しながら考察した。また、旅行記に描かれたトウェインの「観察」と「内省」に関心を持ったことで、彼が時代を経るごとに「観察」から「内省」へと関心をシフトさせていた点について検討した。さらに、「内省」への関心は、晩年、自身の記憶へと向かい、『自伝』執筆という形で具体化した。口述筆記によって執筆された自伝は、見方を変えれば、トウェインが記憶の旅路を記した記憶の旅行記と言えるのではないか。この点について紀要論文にまとめた。また『赤外套外遊記』に関して、そこに描かれたトウェインのヨーロッパ諸国に対する認識について、査読論文にまとめ、現在、編集中の段階にある。
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