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2012 年度 実施状況報告書

物の操作から見たヒトを含む霊長類の比較認知発達

研究課題

研究課題/領域番号 23700313
研究機関京都大学

研究代表者

林 美里  京都大学, 霊長類研究所, 助教 (50444493)

キーワード比較認知発達 / 物の操作 / 道具使用 / チンパンジー / ボノボ / オランウータン
研究概要

チンパンジーとヒト幼児を対象におこなってきた、物の操作を指標とした一連の認知発達課題をさらに発展させることで、ヒトを含む霊長類の比較認知発達スケールとして確立することを目的として研究をおこなった。非言語性の課題を直接対面場面で実施することで、ヒトとヒト以外の霊長類を同一の尺度で比較することができる。物にかかわる知性について、物理的な特性の理解に加え、社会的要因まで含めて多角的に検証をおこなう。チンパンジーの行動観察と飼育・麻酔検査補助作業に携わり、とくに四肢麻痺を発症したチンパンジーの行動の回復過程について国際学会で発表するとともに、論文として投稿した。飼育下のチンパンジーだけでなく、アフリカにくらすチンパンジーとボノボ、唯一アジアにくらす大型類人猿であるオランウータンの研究に参与している。チンパンジーとボノボは同じパン属で遺伝的には非常に近縁であるにもかかわらず、道具使用行動や社会的行動において大きな種差が見られ、ヒトの進化の要因を探るうえで示唆に富んでいる。マレー半島でおこなわれているオランウータンの野生復帰プロジェクトでは、自然環境下での母親による育児の観察などの行動・生態調査をおこなった。大型類人猿の全4種について、飼育下と野外の双方で観察をおこなってきたため、ヒトに近縁な種の認知発達について、基礎的な資料を得ることができている。ヒトについても健常発達の幼児だけでなく、発話以前の乳児や健常児以外の子どもにも課題の適用範囲を広げるため、比較可能なデータを収集するための準備や予備的な療育活動への関与をおこなった。日常の行動観察と認知発達課題を併用することで、物の操作や道具使用の進化について多角的な視点から検討をおこなうことができる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

チンパンジーを対象とした直接対面場面での課題の実施は現在中止している。個体を限定して対面場面を再開するとともに、対面場面以外でも実施可能なように課題を改変することも検討している。全体の進捗状況としては、ヒトの子どもを対象とした研究を開始する基盤がほぼ整ったため、大きな問題はない。

今後の研究の推進方策

チンパンジーを対象とした研究については、日常の行動観察および対面場面もしくはそれ以外での課題実施による研究の進展をはかる。新しい大型ケージ設備が導入されたことを受け、それを活用した実験的研究や行動観察をおこなう。ヒトの子どもについても比較可能な形で課題の実施を開始する。飼育下および野外でのチンパンジーなどの大型類人猿を対象におこなってきた、行動発達と母子関係の長期観察から得られた知見およびヒトの発達・育児への示唆についてまとめ公表する。マレーシアにおけるオランウータンの発達研究と母子観察を継続しておこなう。

次年度の研究費の使用計画

チンパンジーおよびヒトを対象とした課題で使用する物品の購入を予定している。研究成果の発表のため国内旅費を使用するほか、オランウータンの調査継続のためマレーシアへの渡航をおこなう。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Streptococcus troglodytae sp. nov., from the chimpanzee oral cavity2013

    • 著者名/発表者名
      M Okamoto, S Imai, M Miyanohara, W Saito, Y Momoi, T Abo, Y Nomura, T Ikawa, T Ogawa, T Miyabe-Nishiwaki, A Kaneko, A Watanabe, S Watanabe, M Hayashi, M Tomonaga, & N Hanada
    • 雑誌名

      International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology

      巻: 63 ページ: 418-422

    • DOI

      10.1099/ijs.0.039388-0

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ちびっこオランウータン2012

    • 著者名/発表者名
      林美里
    • 雑誌名

      科学

      巻: 82 ページ: 614-615

  • [雑誌論文] チンパンジーの誕生会20122012

    • 著者名/発表者名
      林美里
    • 雑誌名

      科学

      巻: 82 ページ: 1352-1353

  • [雑誌論文] チンパンジーとボノボ―女性がリードするボノボの社会2012

    • 著者名/発表者名
      林美里
    • 雑誌名

      発達

      巻: 131 ページ: 96-103

  • [学会発表] Behavioral recovery from tetraparesis in a captive chimpanzee

    • 著者名/発表者名
      Hayashi, M., Sakuraba, Y., Watanabe, S., & Kaneko, A.
    • 学会等名
      XXIV Congress of the International Primatological Society
    • 発表場所
      Cancun, Mexico
  • [学会発表] チンパンジーとヒト幼児における二次元平面への積木配置:空間配置と順序の規則性

    • 著者名/発表者名
      林美里・竹下秀子
    • 学会等名
      日本霊長類学会第28回学術集会
    • 発表場所
      椙山女学園大学, 名古屋市
  • [学会発表] “Nurturing nature” project at Orang Utan Island

    • 著者名/発表者名
      Hayashi, M.
    • 学会等名
      International Institute for Advanced Studies, Research project: Origin of human mind, 4th meeting
    • 発表場所
      Kyoto
    • 招待講演
  • [学会発表] Cognitive development in great apes and humans

    • 著者名/発表者名
      Hayashi, M.
    • 学会等名
      AA Symposium "Conservation of isolated primate populations"
    • 発表場所
      Inuyama
    • 招待講演
  • [学会発表] チンパンジーの子育てに学ぶ

    • 著者名/発表者名
      林美里
    • 学会等名
      フレンズ・TOHO特別講演
    • 発表場所
      愛知東邦大学, 名古屋市
    • 招待講演
  • [図書] 「新・霊長類学のすすめ」第6章:霊長類の心の進化―比較認知発達の視点から2012

    • 著者名/発表者名
      林美里
    • 総ページ数
      82-93
    • 出版者
      丸善出版株式会社
  • [図書] 「日本のサル学のあした―霊長類研究という「人間学」の可能性」第3章-07:「物遊び」から発達をとらえる2012

    • 著者名/発表者名
      林美里
    • 総ページ数
      202-207
    • 出版者
      京都通信社

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公開日: 2014-07-24  

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