研究概要 |
断片文字の認知における最短距離連接モデルを検証するため,21人による追加実験を行った.前年度の実験と合わせて計45人の実験を解析した結果,(a)被験者は最短距離にある点を先に結ぶ.(b)最短距離で結ぶ場合の平均反応時間は,最短距離でなく結ぶ場合より短い.ということが分かった.ヒトは残された情報の間の距離を基に断片的視覚情報を認識しており,断片文字を認知する時,最短距離の関係にある断片情報を結ぶことによって構築される構造と,記憶にある文字の構造との照合によって文字を認識していることが実証された. 完全な文字の認知課題と断片文字の認知課題における脳活動を10人の被験者によるfMRI実験で比較した.断片文字の認知の場合には,両側前頭葉を中心として,有意に活動していることが分かった.前年度のfNIRSによる実験とよく一致している.それらの脳部位は,断片的視覚情報の認知における形状の認知,視覚的ワーキングメモリ,および記憶に基づく意思決定など,重要な役割を担当していることが示された. 欠損文字の認知力による認知障害の予測および予防の可能性を検討することを目的とし,ヒューマンフレンドリーな断片文字認知力の計測システムを開発した.このシステムを用いて30歳~79歳の健常者1,108名による実験を行い,断片文字の認知力と認知症の兆候となる脳の無症候性病変との関連を定量的に調べた.その結果,断片文字の認知力と無症候性白質病変とに関連性が認められた.欠損文字認知力による認知障害の予測および予防の可能性が示された.
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