研究課題/領域番号 |
23700321
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
高橋 英之 玉川大学, 脳科学研究所, グローバルCOE研究員 (30535084)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 自閉症 / ロボット療育 |
研究概要 |
本研究では,発達障害児(主に自閉症)のロボット療育の効果を定量化することを試みることを目的としている.そのために今年度は,成人と幼児を対象にしたロボットとの交流実験を行った.成人の実験では,人間とロボットの模倣が,人間のロボットに対する認識に与える影響を検討した.その結果,無意識的なロボットの動きの人間の模倣(同調)は,人間がロボットと行うゲームの戦略に影響を与えることがわかった.逆に露骨に意識的な模倣はあまりロボットに対する被験者の行動に影響を与えないことも示された.また幼児を対象とした実験では,幼児のロボットに対する認識を定量的に推定するシステムを開発することを試みた.具体的には玉川大学赤ちゃんラボにおいて,モーションキャプチャを用いて三次元的な幼児とロボット,そして幼児の養育者の空間的位置と向いている方向をミリ単位で計測可能なシステムを導入した.またこの計測により得られた位置関係のデータ系列を解析する為に,子供のロボットに対する興味とロボットへの距離のとり方のモデルを作成し,実際の実データと照らし合わせることで,幼児のロボットに対する認識(興味の質)を推定することを試みた.その結果,幼児がロボットをどのような存在として認識しているのか,ある程度のレベルで推定することが可能になった.これらの研究に並行して臨床医と議論を行うことで,自閉症児でデータを収集する準備も行うことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
自閉症児のロボット療育の評価法の開発を目的とした本研究であったが,本年度はNECがレンタルで提供している移動型ロボットのPaPeRoを導入し,モーショキャプチャを用いて子供のロボットに対する認識を定量化する手法として具体化することができた.また定型発達の子供のデータを数多く取得することができ,知見の蓄積ができた.さらにこれらの成果にもとづき,発達障害児で調査を行う共同研究の話も始まった.これらの研究のスピードは,当初の計画書よりも速い.
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は,発達障害児のデータの収集を本格的に開始する.そして行動解析手法をより洗練させることで,定型発達児と発達障害児のロボットに対する認識の違いを定量化する.そしてロボットとの交流を続けることによる,ロボットに対する発達障害児の認識の変化も調べる.また他者に対する発達障害児の認識の変化も同時に検討することで,ロボットを用いた療育の効果の定量化を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度からPaPeRoというNECのロボットを用いることで,大きく研究を進めることができた.このロボットは,3年間でレンタルする形で導入する必要があり,当初計画では初年度に実験設備構築のために使用予定であった科研費を三年間に分散する必要が生じたため,今年度の科研費の一部を次年度に繰り越すこととした.今年度はPaPeRoのレンタル契約を続けると共に,生理指標を計測可能な心拍計などを導入し,より多角的に被験者の状態をモニタリングすることを目指す.
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