研究課題/領域番号 |
23700321
|
研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
高橋 英之 玉川大学, 脳科学研究所, グローバルCOE研究員 (30535084)
|
キーワード | 自閉症児 / ロボット療育 / 擬人化 |
研究概要 |
本研究は,自閉症児がロボットをヒトと認識しているのか,モノと認識しているのかを,モーションキャプチャで計測した子どもとロボット間の空間的距離,ビデオのコーディング分析,第三者による感性評価,そして心拍変動という複数の指標から定量的に推定することを試みる.具体的には,自閉症児のロボットに対する“心理的距離感”に注目する.我々人間には,他者との心地良い空間的距離というものがあり,他者との親密さに応じて心地良いと感じる距離が狭くなることが知られている.このような相手に対して心地良いと感じる距離を心理的距離感という言葉で定義する.ロボットを意図的な存在であると認識することで,例えロボット相手であっても我々は親密さに応じた心理的距離の調節を行うことが知られている.従って,自閉症児がロボットに対する親しみの度合いに応じた心理的距離の調節を行なっているかどうかを調べることで,自閉症児がロボットを擬人的な対象として認識しているかどうかが推定できるのではないかと考えた.今年度は,自閉症的振る舞いを示す広汎性発達障害児とロボットの自由な交流における子どもとロボット間の距離の時間変化を計測した.結果,自閉症児であっても段階的にロボットとの距離を縮めていく傾向があることがみてとれた.またこの子供はロボットの言動に,「ありがとうございます」などの御礼を頻繁に繰り返したり,ロボットのダンスに合わせて,自らも身体を動かしたりと,ロボットを擬人的に扱うような振る舞いをみせた.さらに一度,子どもがロボットのダンスの誘いを断った後,ロボットにすねるような振る舞いをとらせた際,「踊ります」と発言し,フォローをするような気遣いをみせていた.この振る舞いは,ロボットに対して,子どもが関係を修復しようという動機付けをもっていることを示唆する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は複数の自閉症児に研究に協力してもらうことができ,ロボットと自閉症児の交流にかかわる貴重な知見を得ることができた.ただまだ自閉症児のデータが十分に集まっているとは言えず,健常児との定量的な比較はまだできていない.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は健常児と自閉症児のデータをより数多く集め,その振る舞いの違いを定量的に比較することを試みる.さらに自閉症児のロボットに対する振る舞いの時系列的な変化をより詳細に解析することで,自閉症療育におけるロボット使用の可能性についての考察を深めたい.そしてこれらの成果を論文として執筆,発表を目指す.
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|