研究課題/領域番号 |
23700323
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山下 和香代 中央大学, 研究開発機構, 研究員 (70580067)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 知覚 / 乳児 / 発達 / 認知科学 |
研究概要 |
本研究では、乳児を対象に、3次元物体認識の形状に着目したカテゴリカル知覚の実験的研究を目的とする。人工物体を用い、成人やサルを対象とした3次元物体認識メカニズムの研究はこれまでに多くあるが、乳児を対象とした3次元物体認識の形状に着目したカテゴリカル知覚は検討されていない。しかしながら物体を安定して知覚する為には欠く事のできない能力であることから、本研究では次の2点を明らかにする。行動実験と脳活動計測実験により、1).物体の形状に着目したカテゴリ形成のメカニズム、と、2).カテゴリ内およびカテゴリ間の認識の発達過程、を明らかにする。実物体や写真では、極めて多くの要因が重畳した複雑な多様性を呈しているため、形状に着目したカテゴリカル知覚の検討には不向きである。そこで、本研究では、様々な変動要因を統制する為にコンピュータグラフィックスで人工的に3次元物体を作成し、形状に着目したカテゴリカル知覚の実験的研究を進めている。平成23年度には、既に、コンピュータグラフィックソフトによる物体の作成を終えている。さらに、カテゴリ内の認識の検討において、三次元物体として顔と靴を作成し、乳児における行動実験としてカテゴリ内弁別課題を行った。靴刺激は、静止画として呈示されても、奥行き方向の回転運動をしている動画として呈示されても学習が成立した。一方、顔刺激は、静止画として呈示された場合のみ学習が成立した。これにより、顔と顔ではない物体の三次元物体認識学習は異なることが示唆された。このことは、国際学術雑誌Journal of Visionに投稿、掲載済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カテゴリ内、カテゴリ間の検討をするために、平成23年度には行動実験・脳活動計測で呈示する刺激として物体を作成する必要があった。既に、コンピュータグラフィックソフトによる物体の作成を終えている。本研究では平成24年度にNIRSによる脳活動計測を予定している。近赤外分光法(NIRS)の使用についてトレーニングしており、順調に脳活動計測に取り掛かることができる状態である。また、平成24年度の計画にあるカテゴリ内、カテゴリ間の行動実験について既に取りかかる準備ができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の成果をもとに、近赤外分光法(NIRS)を用いた研究と行動実験を続けて行い、カテゴリ内、カテゴリ間の発達メカニズムを明らかにする。当初の計画にそっておおむねスムーズに進行しているため、平成25年度に予定していた近赤外分光法(NIRS)による実験を平成24年度に開始する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1年目に購入を予定していたPC(繰越金)については、データ解析に使用することを予定としていたため2年目に計画している脳活動計測に応じて購入する。本研究に関する最新の研究動向の調査および成果発表のため旅費を計上する。6月には乳児に関する研究を行っている世界中の研究者が集まる国際学会で、9月には日本の神経科学学会で、現段階での成果を発表予定である。他、国際学会発表登録の要旨、国際誌への論文投稿の際に、英文校閲のための謝金を計上する。また、論文執筆を視野に入れているため、文献収集を目的として書籍の購入を予定している。
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