研究課題/領域番号 |
23700324
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
草山 太一 帝京大学, 文学部, 講師 (80384197)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 自己鏡像認知 / 自己認知 / 行動観察 / ハト / オカメインコ / マーモセット |
研究概要 |
動物に鏡を提示し、その自己の反射像を自己と認知するかどうかを調べる研究は自己鏡像認知と呼ばれ、現在までに多くの動物種を対象に検討されている。多くの先行研究では、種を限定しないで視覚的に他個体を識別できることが分かっている一方、自己鏡像を自己の反射物と認識することは難しいと報告されている。そこで、本研究では、共同作業を通じた他者の行動のモニターが、視覚的自己認知の成立を促進すると仮定し、自己認知の成立要因について、鳥類(ハトとオカメインコ)と霊長類(マーモセット)を対象に、実験的に検討することを目的とした。本年度は、予備調査として、自己鏡像に対してどのような反応を示すか、鏡の行動観察を行った。また、他者の存在の有無を弁別刺激として自己の反応を変える訓練を実施することを目指した。オカメインコに鏡を提示すると、初めの数試行は鏡をつつくなど鏡像刺激に対して注意を示す反応が認められたが、このような鏡への興味は試行を繰り返すと、徐々に消失した。コモンマーモセットについては、実際のケージメイト、非ケージメイト、鏡像の3条件で比較検討を行ったが、非ケージメイトと自己鏡像では他個体刺激への接近・回避といった社会的行動の生起頻度に差が認められた。対象とした動物が、鏡像を他個体像とも違った反応を示したため、今後はこれらの傾向が種に共通することであるか、個体数を増やして調査する予定である。他者の存在の有無を弁別刺激とした訓練では、ヒモ引き協力課題を用いた。これはペア個体が協力して同じタイミングでヒモのついた台車を手前に引き寄せると、台車に乗ったエサを手に入れることができる課題である。マーモセットを対象に、ヒモ引き協力課題の訓練をおこなったところ、1個体だけの台車引き訓練ではすぐにヒモを引くことができたが、2個体が同じタイミングで引くことは難しく、手続きの見直しや実験装置の改善が必要となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自己鏡像に対する行動観察で、鏡提示だけでなく、同種の別の他個体などを自由にコントロールして提示するためにテレビモニターを使用することを計画していたが、カメラとモニターを単純に接続するだけでは、ガラス鏡と同じように動物の正面に視覚刺激を提示することができず、技術的な問題が残っている。また新たに実験対象として導入したオカメインコの飼育環境が整って、幼鳥が十分に実験に耐えられるまでに成長するまでに予定よりも時間がかかってしまったため、今年度に着手する予定であった他者の存在の有無を弁別刺激として自己の反応を変える弁別訓練を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
マーモセットで検討した同時ヒモ引き課題では、他者の行動を十分にモニターするため、反応のタイミングを合わせることに重点を置いたが、これを見直し、単純に他個体の存在の有無を弁別刺激として、個体が示す反応を変えるように装置を改良する。またハト、オカメインコの行動実験では、装置の一部を機械化し、コンピューター制御することで、効率よくデータが得られるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の予算で、動物の飼育環境および行動観察するための観察区域や解析ツールは整ってきている。しかし、予想以上に新たな動物の飼育導入に時間がかかり、当初に計画していたオペラント条件づけを用いた刺激提示および反応記録装置の準備に遅れが生じている。これらの実験装置のセットアップに関わる経費を繰り越したため、次年度のできるだけ早い時期に装置を完成させる。またデータの信頼性を高めるため、動物被験体の追加購入および飼育環境の拡充を計画する。コモンマーモセットの実験は、別の研究機関で実施するため、旅費を計上するとともに、学会や論文発表の準備をする。
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