研究概要 |
本研究では,小集団による協同問題解決において視点変容が起きるプロセスを明らかにすることを目的とし,対話エージェントを利用した実験システムの開発とそのシステムを利用した心理実験により検討を行った.平成23年度は,異なる視点に基づく協同問題解決のための実験装置として,マルチエージェントを利用したコミュニケーション実験のプラットフォームの開発した(林・小川,2012).本システムを利用することにより,協同問題解決時における協同相手の振る舞い方や人数等を自由に操作することができ,様々な条件下での実験的検討が可能になった.平成24年度は,その実験システムを利用し,どのような協同問題解決場面において,視点変容が生じるのかについて,いくつかの要因統制実験を行った.実験により得られた主な成果として,(1) グループ内での異なる視点を有する少数派が存在する場合には,視点変容を阻害するエゴセントリックバイアスが緩和されること(Hayashi, 2012), (2) 異なる視点を有するメンバーらへの信頼度の増大が活発な視点取得を引き起こすこと(Hayashi, in press),などが明らかになった.これらの実験から,視点変容を促すいくつかの重要な要因を明らかにすることができ,また協同学習などの日常的な協同場面にも重要な示唆を与えるといえる.今後も本手法を利用し,協同問題解決を促進するための要因やそこでの認知プロセスについて継続的に研究を遂行していく予定である.
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