研究課題/領域番号 |
23700332
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西本 尚樹 北海道大学, 探索医療教育研究センター, 特任助教 (90599630)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 医師主導治験 / 臨床試験 / システム / 自然言語処理 / オントロジー / 知識管理 |
研究概要 |
本研究では、スタッフの移動に伴い業務が変化したため、当初予定していたダイナミックタスクオントロジーの構築を次年度に予定し、平成23年度では、サーバークライアントシステムによる症例集積の進捗管理システムを構築した。具体的な機能としては、臨床試験の進捗管理・文書管理などで、適切なタイミングで関係者全員に周知したり、症例報告書の〆切りを知らせるなど、従来は人海戦術で補っていた部分にオープンソースのWebデータベースを構築し、業務の効率化を図った。システムを実装するに当たり、問題点が明らかになった。一つ目はセキュリティの設定に関するもので、バリデーションと共に時間と労力のかかる部分である。またオープンソースであり、細かい機能の作り込みや改変はスピードが上げられるものの、開発が滞るとスタッフには扱いづらいシステムになりユーザビリディの評価が必要であるとの知見を得た。二つ目は、24時365日のメンテナンスにかかる人件費の問題があげられた。将来的には、生物統計・スタッフへのインタビューから得られた文章の解析などが必要になるため、基礎的な研究を行い、日本放射線技術学会(横浜)、East Asia Regional Biometric Conference 2012(ソウル、韓国)で発表を行った。システム研究には、臨床研究デザインが必要であるが、どのようなデザインで評価するのか使用する手法論が定まっていないケースが多い。そこで、システム研究を扱っている学会として、日本放射線技術学会に焦点を絞り、統計手法・デザイン・倫理性の担保などを調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、研究計画のうち、約20%を達成できた。ダイナミックタスクオントロジーの実装は、今後の研究で進めるが、主には、業務の確定、システムの構築を行った。本研究の遂行には、生物統計学の領域で構築された臨床研究デザインの知識が必須であるが、システム研究における研究デザインは、臨床試験ほど緻密には設計されていないケースが多い。そこで、システム研究などを行っている日本放射線技術学会の論文から研究デザイン等について調査を行った。2010年から2011年に発行された12冊の放射線技術学会雑誌より、原著論文30件を対象とした。統計解析に関する記述を抽出し、手法および有意水準や同意取得の有無について集計を行った。57例の手法が抽出され、studentのt検定(16%)、カイ二乗検定(11%)、Wilcoxonの順位和検定(12%)、対応のあるt検定(7%)で46%を占めることがわかった。しかしながら、有意水準について記載のないものや同意取得の記載が曖昧なものが見られた。上記の結果より、システムの研究には、解析手法だけでなく症例数や有意水準などの試験デザインの記載が不十分であることがわかった。 また、GCPの文章を簡便に検索できるアプリケーションの提供により、新人教育に活用できるものと考えられるが、研究計画に提示した推論機構をシステムに組み込むには、人間が記述した言葉をコンピュータが解釈して情報の提示を行う必要がある。それには、基礎的な用語の重み付けは不可欠であるが、医療の領域においてはこれまでには十分な研究がなされてはいなかった。本研究により、用語の重み付けをコメディカルへの医療情報教育を対象に、シミュレーションを行った。結果は、East Asia Regional Biometric Conference 2012(ソウル、韓国)で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画であるダイナミックタスクオントロジーを構築するには、業務フローに沿ったタスクと行為者のリスト化が必要である。新人教育の終了などに伴い、バラツキをともなっていたフローが標準化されるタイミングで計測機器を導入し、業務効率とその評価の仕組みを構築する。 本研究での被験者は、実際に業務を行うデータマネージャや症例登録担当者であるが、倫理委員会による研究参加への審査は必須であると考えられる。また、もともと業務に携わっているスタッフの数が限られているため、症例数の設計が難しいことがあげられる。本研究では、症例数を実施可能数とせざるを得ないが、後のシステム研究へ繋ぐための基礎データとして、本研究では業務タスクにかかる時間の信頼区間を算出し、その精度を評価する。ICカードシステムによる業務時間の計測については、新しい試験の開始により業務のフローが日々変化していたため、現状では計測が難しいと判断し、次年度に予定を変更した。データセンターの業務のうち、担当者にインタビューを行い、業務分析を行う。データマネジメントにおける行為および対象を抽出する。業務分析と平行して、IC カード記録システムを導入し、個々の業務にかかる時刻を自動記録する。この記録は、第2フェーズで開発したシステムによる業務の効率化を計測するために、計測時の負担を軽減する目的で導入する。本研究では、複雑な推論機構の実装を抑えて、臨床試験現場における適用可能性を高めるため時間概念を導入したダイナミックタスクオントロジーを構築する。平成23 年度の研究では、そのシステム構築をするために既存のサーバー上にwebシステムを構築した。今後は、ダイナミックタスクオントロジーを構築し、汎用的な知識処理表現であるOWL(Ontology Web Language) を使用してコンピュータ可読の記述を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
残額がでてしまった理由に以下の2点が挙げられる。当初の計画では、平成23年度にICカードシステムを導入し、業務フローに従って時間計測を行う予定であったが、組織改編や臨床試験自体のワークフローの変化もあり、定型業務に落とし込むことができず、ICカードを導入できなかった。また、ICカードの導入に当たって業者の選定をしていたが、業務フローを変更することなく計測できるようなシステムを構築するには、研究者がプログラミングを行える自由度の高いシステムが必要であるが、条件にみあうシステムが選定できなかった。データセンターの業務のうち、データマネジメント担当者にインタビューを行い、業務分析を行う。データマネジメントにおける行為および対象を抽出する。業務分析と平行して、IC カード記録システムを導入し、個々の業務にかかる時刻を自動記録する。この記録は、開発したシステムによる業務の効率化を計測するために、計測時の負担を軽減し、データの精度を確保する目的で導入する。行為とその対象を細分化することで、業務改善に必要な要素を明確化し、コンピュータ可読のダイナミックタスクオントロジーを構築することが、第1 フェーズの目標である。本研究では、複雑な推論機構の実装を抑えて、臨床試験現場における適用可能性を高めるため時間概念を導入したダイナミックタスクオントロジーを構築する。平成23 年度の研究では、ダイナミックタスクオントロジーを構築し、汎用的な知識処理表現であるOWL(Ontology Web Language) を使用してコンピュータ可読の記述を行う。 本年は、米国医療情報学会・北米放射線学会等でその成果を公表し、論文化を行う。
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