研究課題
今年度の前半は,昨年度に検討を開始した,ルール・アンサンブル法の2値応答への拡張とその評価について検討し,学術雑誌「Behaviormetrika」に投稿した.また,前年度に引き続き時間依存型ROC曲線の開発を行った.時間依存型ROC曲線では,生存時間分布と共変量の同時分布を用いる.前年度は,中途打ち切りを伴う2変量密度推定に基づくノンパラメトリック接近法を利用したが,本年度は,2変量ベキ正規分布に基づくパラメトリック接近法での開発を試み,2013年度 統計関連連合大会のなかで発表した.今年度の後半は,CART法に基づく2種類の手法(多変量適応型回帰スプライン(MARS)法,自動2値ロジスティック推定法(ABLE))の拡張を拡張した.医学研究では,疾患の重症度を軽度,中程度,重度といった順序カテゴリカル応答で捉えることがある.そのため,本研究は,MARS法を順序カテゴリカル応答に拡張した.順序カテゴリカル応答に対するMARS法は,比例オッズ・モデルの共変量の線形結合をMARS法の打ち切りベキ乗基底関数に変更したモデル形式をとり,その偏分残差によってパラメータを推定する.この方法は,現在,学術論文誌「計算機統計学」に投稿中である.また,ABLE法の拡張では,比例ハザード・モデルの枠組みのもと,生存時間研究に拡張した.因にABLE法とはCART法と同様にステップ関数で近似する回帰手法だが,そのモデル形式はMARS法と同様である.この方法を生存時間データに拡張することで,共変量に基づいたプロダクションルールでハザード比の増加(減少)の程度が解釈できる.また,CART法では主効果の影響を把握することは困難だが,ABLE法ではその解釈も可能になる.この方法は,現在,学術論文誌「応用統計学」に投稿中である.
1: 当初の計画以上に進展している
昨年から引き続いて開発してきた2値応答に対するルールアンサンブル法は,日本計算機統計学会27回大会において発表を行い,その後,学術誌「Behaviormetrika」に投稿した.また,ベキ正規分布に基づく時間依存型ROC曲線は2013年度 統計関連連合大会で発表を行っている.昨年度に投稿した2編の学術論文について,生存時間ルールアンサンブル法は学術雑誌「応用統計学」に掲載され,適応型指標モデルは学術雑誌「データ分析の理論と応用」に掲載された.昨年度の予定していた時間依存型ROC曲線に基づく樹木はROC曲線の安定性の再検討で足踏みはしているものの,少しずつ解決に向かっており,また,ルール帰納法は,学会発表には至っていないものの,ほぼ完成に近づいている.一方で,本年度から研究を開始した,順序カテゴリカル応答に対する多変量適応型スプライン法は,日本計算機統計学会 第27回大会における発表後,速やかに学術雑誌「計算機統計学」に投稿を行い,生存時間データに対する自動2値ロジスティック推定法は日本分類学会 第32回大会における発表後,学術雑誌「応用統計学」に計算を行った.さらに,これまでの樹木構造接近法の研究の集大成として,成書「樹木構造接近法」を執筆し,出版された.大阪消化管がん化学療法研究会との癌臨床試験に対する共同研究では,5編の学術論文,4編の国際会議,2偏の国内会議に関する原稿を共同で執筆した.さらに,国立感染症センターと共同で1編の学術論文が掲載された.
今年度に開発した生存時間ABLE法は,生存時間CART法と同様に結果をプロダクションルールおよび樹木で提示できるだけでなく,生存時間CART法では困難だった主効果の解釈も容易に行うことができる.また,予測確度も生存時間CART法を上回ることがシミュレーションで明らかになっている.今年度は,生存時間ABLE法の精緻化を意図して,パラメータ推定にLasso法あるいはElasticNet法といった縮小推定を導入することを試みる.また,競合リスクを伴う生存時間解析への樹木構造接近法の導入を試みる.癌臨床試験において全生存期間をエンドポイントと考えるとき,そのイベントは本来の癌死以外に例えば脳疾患,心疾患などによる死亡も含まれる.このような場合に癌死以外のイベントは競合リスクと呼ばれる.ここでは,競合リスクを伴う生存時間解析のために生存時間ABLE法を拡張する.また,これまでの懸案であるルール帰納法の開発では,予後が良好な適応患者群を摘出するために,比例ハザード・モデルでの共変量としてルール帰納法の箱によって構成されるダミー変数を用いることを検討する.これにより,箱のなかで検討されない共変量を導入することが可能であり,また,ハザード比による解釈が可能である.また,治療法×箱の2次交互作用を検討することで,治療法に対する適応患者の抽出に繋がる.さらに,本科研の最終年度にあたることから,これまでの研究成果および国内外の研究内容を整理した生存時間研究における樹木構造接近法の総合報告を整理したいと考えている.最後に,今年度も医師主導型臨床試験イ積極的に参画し,実臨床での統計学的な問題点を掘り下げていく.
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