癌臨床研究におけるレスポンダーおよびシグナル検出のための統計的機械学習法の開発

2014 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 23700334
• 研究機関: 山梨大学
• 研究代表者: 下川 敏雄 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (00402090)
• 研究期間 (年度): 2011-04-28 – 2015-03-31
• キーワード: ＡＢＬＥ法 / 多変量適応型回帰スプライン / 競合リスク / 生存時間研究 / ルール・アンサンブル法

研究実績の概要

最終年度は，これまでに提案した手法を精緻化することとともに，より複雑な生存時間データに対する拡張法を提案した．具体的には，次の3点である：
1. 適応的ステップ関数法(ABLE法)を生存時間研究に拡張した．この方法では，生存時間データに対する樹木構造接近法では捉えられなかった主効果の影響を評価できるとともに，実際の臨床研究で散見される「恣意的な2値化」を「統計的根拠に基づく2値化」に変更することができた．さらに，この提案手法は，競合リスクを伴う生存時間データへの拡張を試みた．
2. ルール項および線形項を基本学習器としてもちいるルール・アンサンブル法を2値応答に拡張した方法を提案し，実際データに応用した．既存のルール・アンサンブル法において，2値応答に拡張する場合，最小ランプ関数を損失関数としたもとで，損失の最小化を行っている．ただし，この方法では，基本学習器の応答への影響をオッズ比で捉えることができない．これに対して，提案手法では，ロジスティック回帰モデルの枠組みでルール・アンサンブル法を構築し，偏分残差を損失関数に用いることで，基本学習器の応答への影響をオッズ比で捉えることに成功した．
3. 生存時間MARS法の後退ステップワイズ法の代わりに，前進ステップワイズ法後のパラメータ推定の過程においてlasso，elastic netといった縮小推定法を利用することを試みた．
これらの研究により，3編の査読付き論文，6回の学会発表(計算機統計学会 第28回大会，統計関連学会連合 2014年度大会，日本行動計量学会 第42回大会)で成果を発表した．また，日本感性工学会より，「事例研究賞」を受賞した．

備考

下川敏雄・杉本知之・後藤昌司(2013)の書籍「樹木構造接近法 (共立出版)」のなかで紹介されたRのソースファイルおよびセミナー等で利用した資料を掲示している．

研究成果

• [雑誌論文] 順序カテゴリカル応答に対する多変量適応型回帰スプライン法 (2015)
  • 著者名/発表者名: 下川敏雄 , 辻 光宏 , 後藤昌司
  • 雑誌名: 計算機統計学 巻: 印刷中
  • 査読あり
• [雑誌論文] Improved survival with combined gemcitabine and S-1 for locally advanced pancreatic cancer: pooled analysis of three randomized studies (2014)
  • 著者名/発表者名: J Hepatobiliary Pancreat Sci.
  • 雑誌名: Yanagimoto H, Ishii H, Nakai Y, Ozaka M, Ikari T, Koike K, Ueno H, Ioka T, Satoi S, Sho M, Okusaka T, Tanaka M, Shimokawa T, Kwon AH, Isayama H. 巻: ２１（１） ページ: ７６７－７６７
  • DOI: 10.1002/jhbp.130.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Severely affected ALS patients have broad and high expectations for brain-machine interfaces (2014)
  • 著者名/発表者名: Kageyama Y, Hirata M, Yanagisawa T, Shimokawa T, Sawada J, Morris S, Mizushima N, Kishima H, Sakura O, Yoshimine T.
  • 雑誌名: Amyotroph Lateral Scler Frontotemporal Degener 巻: １５（７－８） ページ: ５１３－５１９
  • DOI: 10.3109/21678421.2014.951943
  • 査読あり
• [雑誌論文] Factors associated with technical difficulties and adverse events of colorectal endoscopic submucosal dissection: retrospective exploratory factor analysis of a multicenter prospective cohort (2014)
  • 著者名/発表者名: Takeuchi Y, Iishi H, Tanaka S, Saito Y, Ikematsu H, Kudo SE, Sano Y, Hisabe T, Yahagi N, Saitoh Y, Igarashi M, Kobayashi K, Yamano H, Shimizu S, Tsuruta O, Inoue Y, Watanabe T, Nakamura H, Fujii T, Uedo N, Shimokawa T, Ishikawa H, Sugihara K.
  • 雑誌名: Int J Colorectal Dis. 巻: ２９（１０） ページ: 1275-１２84
  • DOI: 10.1007/s00384-014-1947-2
  • 査読あり
• [雑誌論文] 生存時間研究における適応型ステップ関数回帰法の開発 (2014)
  • 著者名/発表者名: 下川 敏雄 , 辻 光宏 , 後藤 昌司
  • 雑誌名: 応用統計学 巻: 43(1-3) ページ: 23-43
  • 査読あり
• [雑誌論文] 山梨県におけるNPO法人経営の持続性に関する研究 (2014)
  • 著者名/発表者名: 王 娜 , 下川 敏雄 , 北村 眞一 , 大山 勲
  • 雑誌名: 日本感性工学会論文誌 巻: 13(1) ページ: 37-44
  • 査読あり
• [雑誌論文] Modified Rule Ensemble method for binary data and its applications (2014)
  • 著者名/発表者名: Shimokawa T., Li L,, Yan K., Kitamura S., Goto M.
  • 雑誌名: Behaviormetrika 巻: ４１（２） ページ: 225-244
  • 査読あり
• [学会発表] モデルに基づくデータピーリング法の開発とその評価 (2014)
  • 著者名/発表者名: 森 大樹，下川敏雄
  • 学会等名: 統計関連学会 2014年度 連合大会
  • 発表場所: 東京大学 (東京)
  • 年月日: 2014-09-13 – 2014-09-16
• [学会発表] 生存時間MARS法の拡張とその評価 (2014)
  • 著者名/発表者名: 下川敏雄
  • 学会等名: 統計関連学会 2014年度 連合大会
  • 発表場所: 東京大学 (東京)
  • 年月日: 2014-09-13 – 2014-09-16
• [学会発表] 山梨県におけるNPO法人の持続可能性に関するヒアリング調査の計量的分析 (2014)
  • 著者名/発表者名: 王 娜，下川敏雄，大山 勲，北村 眞一
  • 学会等名: 第16回 日本感性工学会大会
  • 発表場所: 中央大学 (東京)
  • 年月日: 2014-09-04 – 2014-09-06
• [学会発表] 適応的ステップ関数回帰法に基づく部分分布ハザードの統計的推測 (2014)
  • 著者名/発表者名: 下川敏雄
  • 学会等名: 日本行動計量学会 第42回大会
  • 発表場所: 東北大学 (仙台)
  • 年月日: 2014-09-02 – 2014-09-05
• [学会発表] 競合リスクを伴う生存時間データに対する適応的ステップ関数回帰モデル (2014)
  • 著者名/発表者名: 下川敏雄
  • 学会等名: 日本計算機統計学会第28回大会
  • 発表場所: 中央大学 (東京)
  • 年月日: 2014-05-17 – 2014-05-18
• [備考] 樹木構造接近法およびＲのソース
  • URL: http://www.ccn.yamanashi.ac.jp/~shimokawa/R-Tree/index.html