研究課題/領域番号 |
23700339
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
大山 哲司 大分大学, 医学部, 助教 (60574085)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 標本調査 / 層別無作為抽出 / 事前情報 / 補助情報 |
研究概要 |
本研究の目的は、層別無作為抽出法を用いた母集団特性値の推定問題において、補助情報と過去の調査等により得られる事前情報を同時に組み込み、従来の推定量よりも精度の高い推定量を開発し、その応用について検討することである。本年度は、層別無作為抽出法に限らず標本調査法における母集団特性値の推定で、これまでにどのような研究が行われてきているかを調べるとともに、各層の事前情報に加えて1個の補助変数を組み込む比推定量、回帰推定量についての研究を行った。従来の比推定量や回帰推定量には個別型と結合型の推定量があるため、事前情報を組み込む推定量でも個別型と結合型で補助変数を組み込むことをはじめに検討したが、従来の個別型推定量では、各層の標本サイズが小さい場合に偏りを無視できなくなることが知られている。そのため、特に結合型の推定量に対して考察することとした。事前情報と1個の補助変数を組み込んだ結合型の比推定量、回帰推定量を開発し、その平均2乗誤差を導出した。従来の不偏推定量、結合型推定量、事前情報のみを組み込んだ推定量の平均2乗誤差との理論的な精度の比較を試みたが、開発した推定量の方が優ることを理論的に示すことは困難と考えられた。比推定の場合において2変量正規分布を仮定したシミュレーションを行った結果では、事前情報の質が高く、目的変数と補助変数との相関が高いほど、補助変数の変動係数が目的変数の変動係数と比べて小さくなるほど、開発した推定量は従来の不偏推定量、結合比推定量、事前情報のみを組み込んだ推定量よりも精度が高くなるという結果が得られた。限られたシミュレーションの結果ではあるが、開発した推定量は特に標本サイズが小さい場合において、有用な推定量となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は、事前情報を組み込む層別比推定量、層別回帰推定量について、理論的な考察を行い、シミュレーションによる精度評価と実際の調査への応用について検討することであった。事前情報と補助情報を組み込んだ比推定量と回帰推定量の開発を行い、シミュレーションにより従来の推定量との比較を行った。実際の調査への応用についての検討はできなかったが、これについては特に最終年度に重点的に検討する予定なので、おおむね順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、次年度では事後的な層化を行う推定量に事前情報を組み込むことについて、理論とシミュレーションにより検討する。最終年度ではより一般的なキャリブレーション推定量に対して事前情報を組み込むこと、さらに無回答標本が存在する場合への応用について検討していく予定である。標本調査法に関しては最近でも様々な研究が行われており、その動向について広く目を向けながら今後の研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
適宜必要な文献の購入に使用するとともに、情報収集や成果発表のために学会に参加する際の旅費として使用する。
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