研究課題/領域番号 |
23700341
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
松浦 峻 青山学院大学, 理工学部, 助教 (70583368)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 主要点 / Principal points / 主成分分析 / クラスター分析 / 多変量解析 / 離散近似 |
研究概要 |
本年度は、多次元確率分布の主要点における主部分空間定理のより広い確率分布群への拡張を中心に主要点の理論的性質の解明に取り組み、以下の成果を得た。1、異なる一般の球面対称分布の位置混合分布の主要点における主部分空間定理の証明 Matsuura and Kurata (2011, Journal of Multivariate Analysis)で示された原点を取る確率が0の球面対称分布の位置混合分布の主要点における主部分空間定理を、異なる一般の(原点を取る確率が正の場合も含む)球面対称分布の位置混合分布へ拡張した。これは、母集団が群構造を持ち各群が異なるばらつきを持つときに主要点を求める際の計算量が大幅に減少するという意味で有用であると考える。この成果は京都大学数理解析研究所発刊の「数理解析研究所講究録1758」に掲載された。2、主要点の概念の拡張(一般化) 対象となっている確率分布の次元数をpとおくとき、p次元確率分布のn個の主要点そのものではなく、次元を縮約してm次元(m<p)周辺分布のn個の主要点を求めることを考えると、球面対称分布の位置混合分布および楕円対称分布において、m次元への縮約として第1~m主成分を取ることが平均2乗距離の損失の観点で最適な次元の縮小になることを示した。この成果について、2011年9月に開催された「2011年度統計関連学会連合大会」にて研究発表を行い、また、国際的学術雑誌「Communications in Statistics‐Theory and Methods」に論文を投稿し掲載決定となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(平成23年度)の当初の取り組み課題であった(1)異なる一般の球面対称分布の位置混合分布の主要点における主部分空間定理の証明(2)楕円対称分布の位置混合分布の主要点における主部分空間定理の証明の2つの課題について、課題(1)は達成したが、課題(2)は未達成となった。 一方で、「研究実績の概要」の欄に述べた通り、「主要点の概念の拡張(一般化)」に関して成果を得ており、また、当初の課題(2)についても来年度(平成24年度)中には何らかの成果を発表できそうな感触を得ている。 従って、全体としておおむね順調に研究が進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、本年度(平成23年度)取り組んできた「課題(2)楕円対称分布の位置混合分布の主要点における主部分空間定理の証明」に引き続き取り組む。この証明がなされれば、本年度の成果である松浦・倉田 (2011, 数理解析研究所講究録1758)および楕円対称分布の主要点における主部分空間定理を与えたTarpey, Li, and Flury (1995, Annals of Statistics)の両方の結果を含んで拡張した定理が得られることになる。 また、当初から平成24年度に取り組む予定であった「課題(3)主要点における主部分空間定理が成立する確率分布の条件の導出」および「課題(4)多次元確率分布の主要点の一意性,対称性に関する研究」に取り組む。 さらに、当初は平成25年度に取り組む予定であった「課題(5)確率分布のパラメータが未知な場合の無作為標本からの主要点の推定問題」および「課題(6)主要点の応用に関する研究」について、本年度の研究過程において成果が出そうな感触を得ており、前倒しで取り組む予定である。特に、後者の「主要点の応用に関する研究」については品質管理問題への応用に取り組んでおり、実用的な成果になる可能性があると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度(平成23年度)は研究費が全額予定通りに交付されるかどうかが未定の状態が長く続いたため、国際会議への参加を見送らざるを得なかった。その結果「次年度使用額」となった約20万円については、次年度は少なくとも2度の国際会議への参加を予定しており、その旅費に充てる予定である。 また、国内学会や国際会議への参加の際に使用する持ち運びがしやすい軽量なノートソコンと必要な関連ソフトウェア(Tex2Word、Mathtypeなど)を購入する。 その他、数理統計学関連図書、情報処理消耗品などは研究の進行に不可欠であり、購入の予定である。
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