統計解析において重要な問題である欠測値を含む統計解析理論と得られた多次元データが正規分布に従うかを調べる多変量正規性検定理論の研究を行った。この問題に関しては様々な視点からの多くの研究成果がこれまでにもあった。 本研究では最初に挙げている欠測値を含む統計解析理論に関しては多くの多変量解析理論の中でも判別分析に注目して研究を行った。欠測値が含まれている状況下では分散パラメータの推定に問題が起こることに着目し、ここでは欠測パターンが単調である場合に限ってではあるがその状況下で陽に計算できる最尤推定量を用いてFujikoshi and Seo(1998)で与えられている高次元下で用いることのできる線形判別関数の期待誤判別確率の漸近近似を与えることができた。 さらに多変量正規性検定に関しては特に近年注目されている高次元データについての検定統計量の漸近近似を考え、その統計量はモーメントベース、とくに歪度、尖度をもとにした検定統計量に着目し、そこではコーニッシュ・フィッシャー展開とウィルソン・ヒルファーティー変換を用いることによってこれまでも広く用いられているMardiaの検定統計量よりも検出力の観点から改良した統計量の提案を行った。また、その際に問題となっていた共分散行列の推定であるがここではPavlenkoらの提案しているgLasso推定を用いたブロック対角行列の推定という新たな視点を得ることもでき、AICを用いることによって、それらの推定法の改良も行った。さらにこのAICやgLassoが必要とする正規性の仮定についてはクラスター分析を用いることによりノンパラメトリックな方法の提案も行った。
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