• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実施状況報告書

最先端トランスクリプトーム解析のための統計的バイオモデリング

研究課題

研究課題/領域番号 23700346
研究機関統計数理研究所

研究代表者

吉田 亮  統計数理研究所, モデリング研究系, 准教授 (70401263)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード生体生命情報 / 状態空間モデル / トランスクリプトーム / オミックスデータ
研究概要

生化学反応システムを対象としたベイジアンモデリングに関する研究開発を実施した。状態空間モデルと呼ばれる動的潜在変数モデルをもとに、システムの動作を決定する生化学パラメータや生体内分子ネットワークの構造を観測データから逆推定する手法を開発した。本年度は方法論の研究を重点的に推進した。とりわけ、生化学反応システムに本来的に備わるロバスト性に着目し、モデリングの過程で、ノイズによる位相の揺らぎやパルス、ネットワーク構造の部分的な破壊など、摂動に対して頑強なシステムモデルを自動設計することが可能な極めてユニークな方法論を構築することに成功した。これらについては現在論文を執筆中である。 また、開発したモデリング技術を活用して抗癌剤の薬剤動態を対象とした遺伝子発現ネットワークのモデリングに着手した(現在も開発中)。他機関の共同研究者による協力のもと、薬剤耐性を獲得した肺癌細胞の全遺伝子の発現状態を観測して、得られたデータのパターンを高精度に再現できるシミュレーションモデルを設計中である。この癌細胞の転写制御に関しては、現時点で解明されていないメカニズムがかなり多いため、モデル開発において多くの課題が残されているが、予測という観点ではある程度の精度を持つモデルが出来上がりつつある。現在は未知のメカニズムの解明へ向けたトランスクリプトーム・データ解析を実施しながら、モデルのさらなる性能強化を目指して研究を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

方法論の研究に関しては概ね順調である。基本的なアイデアと解析プログラムの主要部分は現時点でほぼ完成している。ソフトウェア開発についても、一般のユーザーが何とか使えるレベルまでには仕上がっている。インタフェースやマニュアル等の整備がまだ不十分であり、その点に関しては次年度以降の課題である。一番の問題は、実問題の応用において想定外の問題が出てきたことである。モデルを作る際、事前に数パターンのデータ解析を行い、転写制御システムの特性をある程度明らかにする必要がある。本来であればそこで得られた情報をモデルに取り込みたい。しかしながら、研究対象に設定した癌細胞のシステムが複雑過ぎたためか、この過程で思わぬ躓きがあった。そこで今しばらくは、プロモータ解析(文字列のパターン認識)やその他のデータ解析手法の開発を重点的に推進する方針に転換した。ここの研究がもう少し進めば、本研究プロジェクトは大きく前進することになる。

今後の研究の推進方策

・モデル開発の前段階に必要になるプロモータ解析(文字列のパターン認識)やその他のデータ解析手法の高度化を重点的に推進する。・ソフトウェアのインタフェースやマニュアル等の整備を実施する。また、モデル設計のスループット性をさらに高めるために、生体情報データベースとの連携を効率化する。・並列計算機を利用して、推定に要する計算の高速化を行う。・癌の全遺伝子転写制御モデルを完成させる。

次年度の研究費の使用計画

・プログラム開発の効率化のためにマルチコアを搭載した高性能計算機を一台購入する。・研究成果発表ならびに開発された技術の広報活動として、今年度は国内外の学会やセミナー等で数多くの講演を行う予定である。このため出張費を少し多めに計上した。また、論文の英文校正費と出版費を計上した。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] SiGN-SSM: open source parallel software for estimating gene networks with state space models2011

    • 著者名/発表者名
      Tamada, Y., Yamaguchi, R., Imoto, S., Hirose, 0., Yoshida, R., Nagasaki, M., Miyano, M.
    • 雑誌名

      Bioinformatics

      巻: 27(8) ページ: 1172-1173

    • DOI

      doi:10.1093/bioinformatics/btr078

    • 査読あり
  • [学会発表] Bayesian modelling of biological pathways and decoupling of hidden regulatory signals using nonlinear state space models2011

    • 著者名/発表者名
      Ryo Yoshida, Hiromichi Nagao, Masaya M. Saito, Tomoyuki Higuchi
    • 学会等名
      Yeditepe International Research Conference on Bayesian Learning (YIRCoBL 2011)(招待講演)
    • 発表場所
      トルコ共和国
    • 年月日
      2011年6月16日
  • [学会発表] Bayesian supercomputing tackles cancers2011

    • 著者名/発表者名
      Ryo Yoshida
    • 学会等名
      Joint Meeting of The 2011 Taipei International Statistical Symposium and 7th Conference of The Asian Regional Section of the IASC(招待講演)
    • 発表場所
      台北
    • 年月日
      2011年12月17日
  • [図書] データ同化入門2011

    • 著者名/発表者名
      樋口知之、上野玄太、中村和幸、中野慎也、吉田亮
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      朝倉書店

URL: 

公開日: 2013-07-10  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi