研究概要 |
本研究は「遺伝子機能の環境依存性に着目した大腸菌の代謝ネットワークのロバスト性機構の解明」を目的にしており、平成25年度の課題は「代謝ロバスト性の総合的モデル化と機能予測」であった。そこで当初予定通りに、大腸菌の野生株と欠失株を対象に大腸菌の生育の違いを明らかにするための数理モデル構築を行った。モデルの構築は、グルコース培地とグリセロール培地に着目して行われた。まず、代謝の定常状態から定常状態への継時的な変化であることから、Chassagnoleらの大腸菌の解糖系に関する微分方程式によるモデルを基に、大規模な数理モデルのパラメータ最適化および感度解析を行う手法を提案した[1]。さらにグルコース培地とグリセロール培地を想定したモデル構築をおこなった[2]。これまでグリセロールの取り込み系を含む中央代謝を再現したモデルとしてWangらのモデルがある。しかし、解糖系および簡略化されたTCA回路のみとその規模は小さく、グリセロールの取り込み系および解糖系やTCA回路を含む中央代謝全体を含めた大規模なモデル構築の報告はまだない。そこで本研究ではKadirらのモデルに,グリセロール培地で大腸菌を培養したときに活性化される糖新生経路、エントナー・ドゥドロフ経路、芳香族経路およびグリセロールの細胞内への取り込み系を追加し、大腸菌におけるグルコースおよびグリセロール代謝の動的モデルの構築を行っている。そして,Martinez-Gomeらによって実験的に測定されたグルコース培地とグリセロール培地での大腸菌K12由来JM101株の増殖と炭素源および酢酸,インドール濃度を再現を目指しモデルのパラメータ最適化を行った。さらには感度解析により、パラメータの変化が代謝ネットワークに与える影響を評価した。[1]Tohsato Y. et al., Genes, 2013. [2]Shionoya Y., Yukako Tohsato, et al. Genome Informatics, 2013 [poster].
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